学力向上のカギは教育環境の改善
公益財団法人スプリックス教育財団が発表した調査によると、児童養護施設の約7割でICTが導入されているものの、基礎学力向上には「学習意欲の不足」や「勉強嫌い」が大きな障壁となっていることが明らかになりました。特に、同財団は基礎学力の必要性に注目し、児童養護施設における学力・進学実態調査を実施しました。
調査の概要と背景
この調査は、33の児童養護施設から得られた回答を基に、学力、特に基礎学力の状況を把握することを目的としています。児童養護施設に入所する子どもたちは、家庭環境の影響を受けることが多く、学業が遅れている場合が少なくありません。その結果、進学や就職にも影響が出ることが懸念されています。実際、同財団が継続的に支援している大学生は、児童養護施設出身者が多く、学力の奮起が必要です。
調査結果のポイント
調査結果によれば、90%以上の施設が基礎学力の重要性を認識しているものの、実際には50%以上の施設で在籍者の基礎学力が定着していないという現実があります。具体的には、讀み書きや計算、英単語といった基礎学力が不足しているとされています。また、定期テストで平均点を取れない在籍者や、学校の授業についていけない子どもが多いことも示されました。
さらに、学力不足の主な原因として挙げられているのは、「学習意欲の不足」や「勉強嫌い」といった心理的要因です。今回の調査で、教育環境が整っていても、子どもたちの学習意欲が欠如していることで、基礎学力が身についていないことが明らかでした。これは、学力向上の大きな課題です。
ICTの導入状況とその課題
調査では、ICTの活用が進んでいる一方で、その効果が十分に発揮されていないことも指摘されています。調査対象の33施設では、高校卒業後の高等教育機関へ進学する割合が31.7%と低く、経済的困難や進学意欲、教育環境が進学を妨げる要因となっています。
実際、ICTを活用した学習プログラムがあるものの、「宿題を一緒にする」といった対策に頼っている施設が多く、ICTによる学習充実感が得られていないことが浮き彫りになりました。施設がICTを有効に活用するためには、ソフト面を含めた環境整備が求められています。
未来への提案
この調査の結果、児童養護施設における基礎学力の定着を推進するには、学習意欲を引き出すための環境整備が最も重要であることが示唆されています。施設責任者や指導者は、単にICTを導入するだけでなく、子どもたちの学習意欲を高めるためのプログラムや支援策を考える必要があります。
また、ICTを効果的に使用している施設の事例を分析し、その成功要因を共有することが、他の施設のための指針となるでしょう。これにより、児童養護施設における教育環境が改善され、基礎学力の向上が期待できると考えられます。
このように、児童養護施設における学力向上のためには、多角的なアプローチが求められています。今後も、児童養護施設の教育の質を向上させる取り組みが続けられることを期待します。
詳細な調査結果については、スプリックス教育財団の公式サイトをご覧ください。