抗菌薬意識調査結果
2021-10-05 11:00:14

抗菌薬と感染症に関する意識調査から見える日本の現状と課題

抗菌薬と感染症に関する意識調査から見える日本の現状と課題



感染症治療の切り札として知られる抗菌薬が近年、効かない状況が増えてきています。その背景には、薬剤耐性菌(AMR)の問題が深刻化していることがあります。抗菌薬抵抗性の進行により、日本でも2017年には薬剤耐性菌が原因で8,000人以上が死亡したとも言われており、この問題への理解と対策が急務です。

ここで紹介するのは、AMR臨床リファレンスセンターが実施した「抗菌薬・抗生物質に関する意識調査」の結果です。この調査は、一般の方700名を対象に行われ、抗菌薬や薬剤耐性についての知識や認識を深めることを目的としています。調査を通じて見えてきたことは、私たちの抗菌薬に対する理解がまだ不十分であるという現状です。

調査結果から見えた知識不足



調査の結果、抗菌薬や抗生物質がウイルスには効果がないことを正しく理解している人は、わずか18.0%でした。また、約8割の人が薬剤耐性菌に感染する可能性があることをあいまいに認識している一方、実際に何らかの対策を取っていると回答した人は少なく、約60%が特に何もしないと答えています。

このように、薬剤耐性に対する意識が低いことが浮き彫りになりました。また、体調不良時に「休む」と回答したのは50.6%で、これは2019年と比較して13.5ポイントも増加していますが、依然として半数近くが「休まない・休めない」と感じている現状も重要です。

知識を深めるチャンス



調査内容では、抗菌薬・抗生物質に対する認識を世代間で比較しましたが、特に若い世代の理解が不足していることが目立ちました。たとえば、抗菌薬が風邪に効かないと正しく認識している人は、40歳代以上では約30%に達するのに対し、10歳代~30歳代は10%程度しか理解していないという結果が出ました。

このような調査結果は、抗菌薬使用の適正化を促す教材やキャンペーンなどが必要であることを示唆しています。若年層を中心に、抗菌薬に関する教育を強化することが、今後の大きな課題になるでしょう。

感染症に対する行動の変化



コロナ禍による影響も見逃せません。新型コロナウイルスの感染を経て、体調不良時の対応に変化が見られるようになってきました。51.0%の人がテレビを情報源として信頼していると回答しており、若い世代ではSNSやWebニュースに注目が集まっていることも特徴的です。このように、多様な情報源が存在する中、信頼できる情報を見極める力が求められています。

調査を実施した背景には、薬剤耐性問題に対する認識を高め、今後の対策を進める必要があることから、広く意識を持ってもらうことが重要です。2021年度の調査結果は、私たちが意識的に抗菌薬を利用し、その正しい知識を深める必要性を示しています。

結論



抗菌薬は私たちの命を守る重要な治療手段である一方、その適正な使用が求められています。薬剤耐性菌への対策には、正しい知識を広めることが不可欠です。感染症の脅威が続く中で、一人ひとりが意識を高め、行動を変えていかなければなりません。今後もこのトピックに注目し、さらなる啓発活動が広がっていくことを期待しています。

会社情報

会社名
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター AMR臨床リファレンスセンター
住所
東京都新宿区戸山1-21-1
電話番号

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