日本の観光地で深刻化するオーバーツーリズム問題:リクルート調査が明らかにした現状と課題
近年、日本の観光地では、観光客の急増によるオーバーツーリズムが深刻な問題となっています。訪日外国人観光客数の増加に加え、国内旅行者の増加も相まって、主要都市や観光地では混雑が常態化し、地域住民の生活環境や観光地の持続可能性に悪影響を及ぼす事態となっています。
株式会社リクルートの観光に関する調査・研究機関であるじゃらんリサーチセンター(JRC)は、この問題の現状を解明するため、全国の観光行政機関や民間企業を対象に大規模な調査を実施しました。その結果、オーバーツーリズム対策の必要性と、その実現における課題が明確になったのです。
調査結果:観光客増加の光と影
調査によると、観光客の増加は、観光行政や観光関連事業者にとってビジネスチャンス拡大という好影響をもたらしている一方、日常生活へのプラスの影響は限定的であることが分かりました。多くの関係者は、生活圏の雰囲気の変化や観光客のマナーの悪さといった、ネガティブな影響を日々感じていると回答しています。
特に問題視されているのが、オーバーツーリズムの解消に不可欠な対策の実施における困難さです。「交通渋滞の解消」や「公共交通の輸送力向上」といった対策は、実行が難しいと多くの関係者が感じています。その理由として、大きく2つの課題が挙げられました。
1つ目は
人材・人手不足です。観光客の分散や誘客施策を効果的に展開するには、十分な人員と人的リソースが不可欠です。しかし、現状では、多くの地域で人材不足が深刻化しており、効果的な対策の実施を阻んでいます。
2つ目は
エリア間の連携不足です。オーバーツーリズム対策は、地域を跨いでの広域的な取り組みが求められます。しかし、各地域間での連携や役割分担がうまく進んでいないことが、対策の遅れに繋がっています。
地域連携の重要性と今後の展望
JRCの研究員である長野瑞樹氏は、この調査結果について次のようにコメントしています。「日常生活エリアと業務エリアの両方で、観光関係者の60%が混雑を感じているという結果は、日本の観光地が前例のない観光客数に対応していることを示しています。しかし、観光客増加のメリットは日常生活では実感しにくいことも分かりました。」
長野氏は、地域ごとの問題や課題の違いを指摘し、地域単独では解決困難な交通インフラの問題などにも言及。地域間の連携強化による課題解決の必要性を訴えています。特に、DMO(観光地域づくり法人)等のリーダーシップによる地域間連携強化が期待されるとのことです。
今回の調査は、日本の観光地の抱える深刻な課題を浮き彫りにしました。オーバーツーリズム問題の解決には、人材・人手不足の解消、地域間の連携強化が不可欠です。関係者間の合意形成を図りながら、持続可能な観光を実現するための取り組みが急務となっています。