DNA損傷応答の制御
2026-03-18 10:35:03

DNA損傷応答の新たな制御メカニズムを解明した研究の成果

研究の背景と課題



私たちの体内に存在する細胞のDNAは、常に外的要因や内部の代謝活動により損傷を受けています。この損傷が放置されると、がんや老化、遺伝性疾患につながることがあります。そのため、生物はDNAを修復・保護するための機能、つまり「DNA損傷応答」(DDR)という仕組みを進化させてきました。

特にがん細胞はこのDDRを利用し、化学療法や放射線治療に対する耐性を高めるため、DDRは新しい抗がん剤の開発において非常に重要なターゲットとなっています。しかし、これまでの研究では、DDRの「活性化」に関する部分に多くの焦点が当てられてきたため、DDRのどのようにして活性を維持し、さらには終結するのかといったメカニズムは不明なままでした。

研究成果と新たな発見



千葉大学大学院の福本 泰典講師と小椋 康光教授、さらには京都薬科大学の幸 龍三郎助教を中心とした研究チームは、DDRの活性化から不活性化に至る過程での構造変化に着目しました。本研究は、DNA損傷応答に関与する複数のタンパク質が、エネルギー的に等しい構造変化を段階的に繰り返すことによって「活性化」「維持」「不活性化」を制御するメカニズムを解明しました。

この研究は、最先端技術であるin silico解析と生化学実験を組み合わせ、多くの重要な発見をもたらしました。

1. 共通するアミノ酸配列の発見
DNAの損傷が生じた際には、まず「9-1-1複合体」と呼ばれるリング状のタンパク質が修理部隊の中心に集まることが示されました。これに関与する共通の機能的アミノ酸配列「KYxxL+モチーフ」が特定され、9-1-1複合体との相互作用が重要であることが確認されました。

2. Rhinoという新たなタンパク質の機能
機能が不明だったRhinoが、ATR-DDRにおいて2つのKYxxL+モチーフを持ち、複数の9-1-1複合体と同時に結合する「架橋因子」として機能することが明らかになりました。

3. 複合体の形成と解析
DNA損傷応答の初期段階では、9-1-1複合体が染色体と結合し活性化が進むことが示されました。本研究では、Rad17–9–1–1複合体、Rad17–9–1–1–Rhino複合体、Rad9 C末尾部–9–1–1複合体という三つの複合体がDDRにおける異なる段階に関与することが示されました。

4. Rhinoによる9-1-1複合体の架橋
Rhinoが9-1-1複合体を架橋し、大きな構造体を形成するモデルも提案されました。これがDDRにおける反応の場「フォーカス形成」に関与する仕組みと考えられます。

5. エネルギー的に同等な構造変化の過程
活性化、維持、反応終結の各段階に関わる複合体が相互に安定性を持つことが示され、ATR-DDRが同じ安定性を維持しながらも、複数の構造間を移行することが示唆されました。

今後の展望



今後の研究の進展により、DDRの新たな制御戦略がドラッグ開発に役立つことが期待されています。特に、9-1-1複合体の多量体化に着目することで、抗がん剤の新たな開発血が開けるかもしれません。これによりより安全で効果的な治療法の構築に繋がることが期待されています。この研究成果は、学術誌Nucleic Acids Researchにおいて2026年2月に発表されました。


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