2023年「世界渡り鳥の日」を迎えて:生態系をつなぐ鳥たちと昆虫の重要性
毎年10月の第2土曜日にあたる10月12日は、国連が定めた「世界渡り鳥の日」。この日は、渡り鳥の生態や保全について広く理解を深め、多くの人々にその重要性を認識してもらうことを目的とした日です。今年のテーマは「昆虫を守ることは、鳥たちを守ること」というメッセージが込められています。
国際的な呼びかけと日本での活動
「世界渡り鳥の日」は、国際的なキャンペーンであり、さまざまな団体が国境を越えてイベントを行います。日本では、公益財団法人日本野鳥の会が、東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(EAAFP)の一員として、この日にさまざまな活動を展開しています。特に、日本を含むアジア地域では、渡り鳥の生息地であるフライウェイを保全するための普及活動が重要視されています。
日本野鳥の会は特設のポスターを配布し、多くの方に渡り鳥の保護の意義を知ってもらう努力をしています。この日は、世界一斉に実施される野鳥観察イベント「オクトーバー・ビッグ・デー」とも重なっており、参加者が見た鳥を記録し、野鳥観察データベース「eBird」に投稿することも推奨されています。
今年のテーマ:昆虫と渡り鳥の関係
今年のテーマである「昆虫を守ることは、鳥たちを守ること」の背景には、昆虫が多くの渡り鳥にとって、渡りの重要なエネルギー源であるという事実があります。渡り鳥は、長旅の途中で昆虫を探索し、それを捕食することでエネルギーを確保しています。昆虫が繁殖を支えるだけでなく、渡りの成功にも大きな影響を与えるため、その保護が緊急の課題とされています。
しかし現在、集約農業や都市開発の影響で昆虫の生息環境は減少しており、さらには農薬の使用によって昆虫の個体数も脅かされています。これにより、渡り鳥の渡りや繁殖活動が妨げられる可能性が高まり、繁殖成功率の低下を招く恐れがあります。このため、2024年の「世界渡り鳥の日」では、農薬の使用を減らす努力や有機農業への転換、自然植生地域の保護が促されています。
バードウォッチングと市民参加
10月12日は、バードウォッチングの絶好の機会です。この日は、世界中の野鳥愛好者が一斉に観察を行い、見た情報をeBirdに投稿することを奨励されています。これは市民科学プロジェクトとして、世界中のデータを集め、渡り鳥の生息環境を守るための貴重な手助けとなります。
イベント情報とキャンペーンへの参加
世界各地で行われる「世界渡り鳥の日」のイベントは、専用のイベントマップで確認できます。日本野鳥の会は、多様なイベントや活動に参加を呼びかけています。公式ポスターも配布されており、誰でも直接ダウンロード可能です。
この機会に、ぜひ地域の自然環境に目を向け、渡り鳥の観察や昆虫保護に関心を持ってみてはいかがでしょうか。すべての生き物がつながる大切な日として、「世界渡り鳥の日」が広く認知されることを願っています。