病院経営の現状と書籍『病院コスト改革の教科書』
現代社会の中で、病院経営がますます厳しくなっています。特に都市部では、経営難に陥る病院が続出しています。急激な物価の高騰や増加する人件費は、医療機関の運営を圧迫し、医業損益が赤字となる病院が増えているのです。
2025年11月に公表された四病院団体協議会の調査によると、2023年度から2024年度にかけて医業利益が赤字の病院の割合は、70.8%から74.6%に増加し、経常利益が赤字の病院の割合も52.1%から65.0%へと高まっています。このような状況を受けて、株式会社クロスメディア・パブリッシングが新たに刊行した書籍『病院コスト改革の教科書』では、病院経営の現状を打開するための具体的な手法が提案されています。
著者は病院経営コンサルタントとして200以上の病院を支援しており、その成功率は驚異の97.5%を誇ります。本書では、「LCO(ローコストオペレーション)」と「VUP(バリューアップ)」を両輪として、持続可能な病院経営を実現する「循環型増益モデル」を構築するための手法を詳述。医療サービスの質を保ちながら、コストをうまく管理し、病院経営を改善するための知識が詰まっています。
経営難に挑む病院の現状
急速に進む物価の高騰は、日本全国の病院に深刻な影響を及ぼしています。医業収入は増加する一方で、医薬品費や診療材料費、委託費などコストがそれを上回るスピードで膨張しています。さらに、光熱費や人件費の上昇により、運営コストは増加の一途を辿っています。
特に大規模な医療機関では、経営的な柔軟性が制限されているため、自由に料金を設定することができず、コスト削減の重要性は今後ますます高まることでしょう。本書は、医療従事者が持つ課題意識に応え、持続可能で効率的な経営を目指すための具体的なアプローチを示しています。
循環型増益モデルの提案
本書の核となるのが「循環型増益モデル」です。これは、経営資源を最適に利用し、コスト削減と収益向上を同時に目指す手法として提案されています。著者は病院経営において、トレードオフではなく相互に補完関係にあると考え、病院の価値を高めるための戦略を構築しています。このモデルを導入することで、経営環境の厳しさを乗り越えて行くことができるでしょう。
心理的アプローチによる交渉術
また、著者は医療専門職を巻き込み、取引業者との価格交渉を有利に進めるための心理学的アプローチも紹介しています。医療の質とコスト削減は両立できるとの考え方が根底にあり、医療の質を下げずにコストを最適化する具体的な方法論が示されています。医療の質を無視した単なるコスト削減ではなく、質を高めるためのコスト管理が強調されています。
まとめ
『病院コスト改革の教科書』は、経営に携わるすべての病院関係者に必読の書となるでしょう。病院の理事長、院長、経営企画部門の職員はもちろん、事務部門で働くスタッフにも役立つ実践的な内容が詰まっています。著者が語るように、少しの工夫で経営は改善可能です。本書を通じて、病院経営の新たな道筋を見出していただければ幸いです。