秩父宮記念山岳賞2023の受賞者に注目
公益社団法人日本山岳会は、秩父宮殿下の遺贈金を寿(ことほ)ぎ、その基金を活用し、登山や山岳に関する文化・学術的な活動に貢献した個人や団体を毎年表彰しています。2023年度の受賞者として、2名の研究者が選ばれました。
受賞者紹介
酒井治孝氏
酒井治孝氏は、京都大学名誉教授として、ヒマラヤ山脈の形成過程に関する研究で知られています。彼の主な成果は以下の5つのポイントに分けられます:
1.
年代決定と層序の確立 - レッサーヒマラヤ地帯の地層の年代を特定し、世界的な基準を築きました。
2.
熱年代学的研究 - エベレスト山における地層の露出時期を明らかにし、新たな地質構造を発見しました。
3.
変成岩ナップの研究 - 地層の熱的履歴を解析し、変成岩の形成過程を解明しました。
4.
気候変動の解析 - カトマンズ盆地における過去100万年分の気候変動史を示しました。
5.
教育支援 - ネパールの学校建設や奨学金制度の充実に寄与し、多くの学生の学びを支援しています。
彼の著書『ヒマラヤ山脈形成史』は、学術的な貢献のみではなく、社会貢献面でも評価されています。
中村浩志氏
信州大学名誉教授の中村浩志氏は、絶滅危惧種として知られるライチョウの復活プロジェクトを推進しています。彼の活動は、特に以下の点で注目されています:
- - 1980年代のライチョウの生息数は約3000羽でしたが、近年は2000羽以下に減少。彼のプロジェクトは、絶滅の危機に瀕したライチョウを守るための具体的な行動を生み出しました。
- - 木枠と金網で構成されたケージを用いて、孵化後のヒナを適切に保護しています。
- - 環境省のキャンペーンにおいて、野生の有精卵を利用した繁殖活動が進められ、中央アルプスへのライチョウの移植が成功を収めました。この活動は、2020年に始まり、2024年には中央アルプスにおけるライチョウの成鳥数が約120羽に達する見込みです。
表彰式の詳細
今年の表彰式は、12月7日に開催される日本山岳会の「令和6年度 年次晩餐会」にて行われます。この場では、両氏による記念講演も行われ、研究成果を直接聴くことができる貴重な機会となります。
以上のように、酒井氏と中村氏の業績は、山岳研究のみならず、環境保護と地域社会への貢献にも深く関わっています。彼らの活動が、今後も多くの人々に影響を及ぼすことを期待しています。