人的資本レポート発行動向の調査結果
株式会社リンクソシュールは、人的資本レポートに関する調査を実施し、その結果を発表しました。この調査では、2022年から2024年の間に発行された人的資本レポートの急増が注目されました。
概要
調査によると、人的資本レポートの発行数は、2022年に比べて2024年には約6倍に増加する見込みです。この背景には、企業がステークホルダーからの期待に応えるために、人的資本を強化しようとする動きがあります。特に、非上場企業における発行の増加が顕著で、自社の成長性を示すためにレポートを作成する企業が増えています。
調査の背景
2023年からは、有価証券報告書での人的資本情報の開示が義務化され、企業はこの情報を公開することが求められるようになりました。少子高齢化に伴う労働力不足の影響もあり、人的資本の重要性が増しています。この調査は、人的資本経営の浸透度やその強化に向けた企業の取り組みを分析しています。
調査対象
この調査では、2022年度から2024年度にかけて人的資本レポートを発行した52社を対象にしました。調査は2025年2月に行われ、株式会社リンクソシュールが主体となっています。
発行数の推移
調査の結果、2022年から2024年にかけての発行企業数はおおよそ6倍に増加しています。この変化は、企業が人材を重視し、それをレポートにして情報開示を行うことが一般化してきたことを示しています。
業種別分析
特に、情報・通信・サービス業における人的資本レポートの発行が目立っています。無形商材やサービスを提供する企業では、人的資本の強化が経営において大きな影響を与えるとされています。そのため、企業は成長性を示す手段としてレポートを発行することが重要視されています。
CHRO設置率の分析
一般社団法人CHRO協会のデータによれば、人的資本レポートを発行する企業と一般的な企業におけるCHRO(最高人事責任者)の設置率には大きな差は見られません。ただし、CHROが取締役に任命される割合には差異があり、人事を管掌する役員の多くが執行役という状況が浮き彫りになっています。これが経営戦略と人材戦略の統合を妨げる要因となっている可能性も考えられます。
内容分析
調査により、各社のレポートにおいて頻繁に使用される用語が特定されました。具体的な経営理念や取り組みが盛り込まれ、データの可視化も進んでいます。以下は、レポートの主なトピックです:
- - 人的資本経営の全体像:多くの企業が基本的な概念や経営理念に関連づけて人的資本経営を説明しています。
- - 経営層との連携:経営陣からのメッセージや人的資本経営の戦略的位置づけが強調されています。
- - データの可視化:企業の透明性向上に寄与する数値データの活用が進んでいます。
- - 企業文化の推進:組織文化に基づいた人的資本経営の強化が見られます。
- - 具体的な施策:ダイバーシティや健康経営に関する実践的取り組みが目立ちます。
今後の展望
調査によれば、2022年以前は基本概念の説明が主流でしたが、最近では数値データの可視化が進行中です。また、組織のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中、経営戦略との統合が進んでいます。DE&I(多様性、公平性、包含性)やウェルビーイングに対する関心も高まっています。
リンクソシュールの見解
株式会社リンクソシュールの代表である白藤大仁氏は、人的資本に特化したレポートの意義について述べています。最近の統合報告書の量が増加する中で、人的資本に特化した開示を行う理由として、人材の重要性を高めるための独立した報告が必要であると強調しています。また、非上場企業でも積極的にレポートを発行する傾向が見られ、今後の成長が期待されています。
人的資本のレポート発行は、単なる情報開示に留まらず、そのプロセスが企業の競争力を左右する重要な要素と位置付けられています。これからも企業は長期的な視点でこの取り組みを続けていくことが期待されているのです。