背景
2023年度末までに、国内のガソリンスタンドの数は約2万7000店に減少し、1994年度のピーク時から半減しました。この危機的な状況は特に過疎地域において顕著です。今後の電気自動車(EV)の普及が予想される中でも、政府は2030年までに20~30%の電動車の販売目標を掲げ、2035年には電動車の導入が100%となる方針ですが、ガソリン車の利用も当面は許可される見込みです。そのため、安定した燃料供給網の維持が強く求められます。
また、2018年以降に策定された「エネルギー基本計画」では、AIやIoTなどの新しい技術を用いて、人手不足の解消や安全で効率的な運営のための検討が進められています。セルフ式ガソリンスタンドでは、スタッフが顧客の給油作業を監視する法律がある中で、AIの活用が模索されています。この動きを受け、ELEMENTSは人間の行動を学習し、予測するAI技術を用いたシステムの開発に注力してきました。このシステムは、コスモ石油マーケティングおよびタツノと協力して実運用向けの実証実験を行います。
実証実験の概要
実証実験は2024年10月中に開始される予定で、特定のセルフサービスガソリンスタンドで実施されます。実験の目的は、2024年3月の消防庁通達に基づく新たな機能の開発と、既存機能の改善を確認することです。このシステムでは、給油を希望する顧客がノズルを計量機から外す際に、自動で許可判定を行います。AIによる画像認識技術により、正しい給油姿勢であれば給油が許可され、危険行為の疑いがある場合は、給油を自動で停止し、従業員に警告を出す仕組みが組み込まれています。
このようにして、セルフ式ガソリンスタンドでの業務の効率化を図り、従業員がより価値の高いサービスにシフトできるよう支援します。また、AIによるサポートでヒューマンエラーを防ぎ、安全性を向上させることを目指します。
各社の役割
実験には、コスモ石油マーケティング、タツノ、ELEMENTSが参加しています。コスモ石油マーケティングは、地域の消防への説明や調整、実証実験の推進を行います。タツノは、給油の許可を管理するためのシステムの開発と、必要な設備の設置を担当します。ELEMENTSは、AI技術を用いたプロダクト設計やシステム開発を行っており、この実証実験を通じて新技術の社会実装を推進していきます。
企業の背景
コスモ石油マーケティングは、エネルギーやサービスを通じて顧客に貢献することを目指しています。彼らのスローガン「ココロも満タンに」を掲げ、技術革新や環境配慮を重視した取り組みを行っています。
タツノは、エネルギーインフラ機器のメーカーで、危険物を扱う施設向けの機器を提供しています。ELEMENTSは、個人認証や情報管理に関するソリューションを展開しており、社会課題の解決に寄与しています。これらの企業が協力し、AIを駆使した安全で効率的なガソリンスタンド運営を実現することが期待されています。