国際学生デザイン・エンジニアリングアワード2025受賞作品
概要
皆さん、国際学生デザイン・エンジニアリングアワード(James Dyson Award、以下JDA)の2025年度国際最優秀賞の受賞者が発表されました。ダイソン財団が主催するこのアワードは、革新的な発明を生み出す若き才能を称えるものであり、今年で20年目を迎えました。受賞者には賞金として30,000ポンド(約610万円)が授与されます。
受賞作品の紹介
2025年度のサステナビリティ部門においては、ポーランド出身のフィリップ・ブドニー氏の作品「WaterSense」が選ばれました。このデバイスは、自律型の水質モニタリングデバイスであり、リアルタイムで水質を測定し、汚染を早期に検知することができます。従来の手動でのサンプリングに比べて、AIを用いた分析により、より素早く正確なデータを提供することが可能です。
また、メディカル部門ではアレッサンドラ・ガッリ氏の「OnCue」が受賞しました。これは、パーキンソン病患者のために設計されたスマートキーボードで、タイピング時の振動フィードバックを使って患者の操作を助ける新しいアプローチを採用しています。これにより、彼らが安心してデジタル世界に参加できる環境を提供しています。
環境問題に挑む「WaterSense」
フィリップ・ブドニー氏は、ポーランドのワルシャワ工科大学でナノテクノロジーを専攻している学生です。彼が開発した「WaterSense」は、水質を正確にリアルタイムで測定できる自律型センサーです。このデバイスは、自然の水流からエネルギーを供給し、低コストでリサイクル可能な材料を使用している点が特徴です。
水質の測定は、pH値や溶存酸素、硝酸塩など20以上の指標に対応しており、河川や湖における様々な汚染物質を把握することができます。また、自動で交換されるセンサーにより、手間をかけずに高精度なデータを提供します。現在はポーランドで実証実験が行われており、将来的には他国への展開も計画されています。
医療用スマートキーボード「OnCue」
アレッサンドラ・ガッリ氏は、イタリア出身でデルフト工科大学を卒業したプロダクトデザイナーです。「OnCue」は、パーキンソン病患者のためのキーボードで、穏やかな振動を通じてユーザーの入力をサポートします。これにより、タイピングの精度を向上させ、ユーザーが日常的なデジタル活動を容易に行えるようになります。
このデバイスは、Bluetooth接続が可能で、ユーザーが独自に設定を変更できる設計となっており、各人の症状に応じた調整が可能です。さらに、アレッサンドラ氏は、様々な神経疾患に対する支援への応用も視野に入れ、技術の改良を続けています。
ダイソンの評価と期待
ダイソン創業者のジェームズ・ダイソンは、「JDAは、実社会の問題に真正面から取り組む若き発明家たちを支援しています」と述べ、受賞者の2人がこの理念を体現していると評価しました。
また、両受賞者の発明が商業化へ進むことで、さらなる社会貢献が期待されています。JDAは2002年の設立以来、世界中で400件以上の学生の発明を支援し、総額150万ポンドを超える賞金を提供しています。
おわりに
今回の受賞は、環境問題や医療課題に取り組む若き才能の素晴らしい成果です。彼らの革新的なアイデアが、より良い未来を築く一助となることを期待しましょう。ダイソン財団は、次世代のエンジニアやデザイナーの支援を今後も続けていくことでしょう。受賞された皆さんに心からの祝福を送ります。