日本企業のTSRランキング2026:BCGレポートが示す価値創造の進化
経営コンサルティングファーム、ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、2021年から2025年の間における日本企業の価値創造について深掘りしたレポート「『TSR思考』を価値創造につなげる――日本版バリュークリエーターズ・ランキング2026」を発表しました。
このレポートでは、特に日本企業の株主総利回り(TSR)が過去5年間で驚異的な成長を遂げたことを強調しています。具体的には、日本企業の年平均TSRは+16%という結果で、米国の14%、欧州の12%、新興国の7%を大きく上回り、調査対象の地域の中で最高水準に達しました。これはBCGがこの調査を始めた2021年から初の快挙であり、2025年においても日本企業のTSRは+25%と、引き続き他の地域を超える見込みです。
さらに、TSRを「利益成長」「マルチプル(評価倍率)の変化)」「フリーキャッシュフロー利回り」の3要素に分けると、過去5年間のマルチプルの変化が唯一プラスに転じたことがわかります。これは従来の評価基準の改善が大きな影響を及ぼしていることを示唆しています。
業種別TSRとその変化の背景
業種別のTSR中央値に目を向けると、保険業界が前年に引き続き首位となり、+31%という成績を残しました。次に順位を占めるのは「銀行・金融サービス(保険を除く)」「鉄鋼・非鉄金属」「商社」「半導体」と、いずれも堅調に成長を遂げています。特に「建設」業界は、前回15位から6位への躍進を遂げ、金利の正常化と業績の向上が主要因として挙げられています。この背景には、政策保有株の売却資金を資本還元に回す企業の増加や、AIやデータセンター関連の需要が大きく影響しています。
優れた価値創造企業のランキング
時価総額1兆円以上の企業にフォーカスしたランキングでは、独自の光ファイバー技術を持つフジクラが圧倒的なTSR110%を達成し、首位を獲得しました。新たに上位に名を連ねたのは、防衛関連事業での成長期待が評価されたIHIと、新中期経営戦略が評価された丸紅の2社です。これらの企業は、業種共通の追い風を受けつつ、非中核事業の整理や株主還元方針の刷新を通して、資本コストを意識した経営を進めています。
「TSR思考」を通じた持続的な価値創造の重要性
株価の上昇とは裏腹に、日本企業の本質的な「稼ぐ力」は依然として西洋企業に劣ることが懸念されています。ROE(自己資本利益率)やマルチプルは改善傾向にあるものの、2025年のROE中央値は日本企業で8.9%に留まり、米国および欧州の13%台を下回っています。特に、純利益率の低さが本質的な課題であることがデータから明らかになりました。
BCGのレポートによれば、日本企業が持続的な企業価値創造を実現するためにはTSRを単なる結果指標ではなく、経営の意思決定における重要な指標として捉える「TSR思考」の導入が不可欠です。この考え方を実践することで、企業はより強固な事業戦略、財務戦略、投資家戦略を形成できるとされています。
BCG東京オフィスの加来一郎は、「日本企業のTSRが世界の他地域を上回ることは大きな成果ですが、これは終点ではなく、新たな出発点と考えるべきです。TSRを経営の最上位指標と位置づけ、価値創造を次の次元に進めることが何よりも重要です」と述べています。
調査概要
本調査では、TSR(トータル・シェアホルダー・リターン)の指標を用いて、817社の日本企業を対象に、2021年から2025年までの5年間のデータを分析しました。BCGは1999年以来、グローバルな規模で価値創造の調査を実施しています。の詳細や過去のレポートは、BCGの公式サイトをご覧ください。