合成画像だけで白目認識の精度を追求したAIが登場
クーガー株式会社が、このたび国際会議「IJCB 2025」のSclera Segmentation Benchmarking Competition 2025で、合成データ部門において世界一を獲得しました。このコンペティションは、プライバシーに配慮したAIの開発を目的としており、実在人物の画像を一切使用せずに白目の領域を高精度で認識する技術を競うものです。
プライバシーを重視した技術開発
このような競技は、顔や目の情報が非常に個人に特有なものであるため、それらの画像を大規模に収集・共有することが難しい中で開催されました。SSBC 2025は、プライバシーと高精度を両立させるために次のような問いを提起しました:
- - 実在の人物画像を使用せず、白目を高精度に分離できるか。
- - 合成画像と自動生成されたラベルで、コストを抑えつつ効果的なモデルの学習ができるか。
- - 合成環境と現実環境の違いを、どのように克服するか。
これらの課題に対し、クーガーが開発した「SwinDANet」は特に評価され、合成データ部門での優勝を成し遂げました。
SwinDANetの卓越した性能
SwinDANetは、白目のような複雑で微細な領域を高精度で認識するためのハイブリッドAIモデルです。このモデルには以下の特徴があります:
- - Swin Transformer V2ベースのエンコーダ:長距離依存関係を捉え、精度の高い認識を実現。
- - DenseNetベースのデコーダ:局所構造の再現性に優れ、複雑な境界も高い精度で復元。
- - CSSE注意機構(Channel-Spatial Squeeze-and-Excitation):重要な情報を動的に強調し、特徴マップの選別を最適化。
- - 適応型スキップ接続:空間解像度を保持しながら、エンコーダとデコーダ間の情報伝達をスムーズに実現。
これらの技術的特性により、SwinDANetは、合成データのみで次のような高精度を達成しました:
- - MOBIUS(実データ):F1スコア0.824(1位)
- - SynMOBIUS(合成データ):F1スコア0.856(1位)
- - SMD+SLD(実データ):F1スコア0.725(1位)
この成果は、実データに依存せずにプライバシーを保護しつつ、世界レベルの精度を達成可能であることを証明しました。
今後の展望と応用分野
クーガーは今後、この技術を実現した上で以下の分野での応用を視野に入れています:
- - プライバシーに配慮したバイオメトリクス認証AIの開発。
- - スーパーマーケット、公共セクター、セキュリティ業務などへの展開。
- - 高精度で軽量な視覚AIモジュールのグローバル展開。
また、このたびの成果はIEEE IJCB 2025に投稿される予定の公式論文に共著者として掲載されます。
IEEEとは
IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)は、世界最大級の学術団体で、42万人以上の会員が世界160ヵ国以上に存在し、テクノロジーやエンジニアリングの分野で重要な研究と発展をサポートしています。
会社概要
クーガー株式会社は2006年に設立され、人型AIプラットフォーム「LUDENS」を展開しています。また、その技術から誕生したAIキャラクター「レイチェル」は、約7,000店舗のファミリーマートに導入され、業務を支援しています。クーガーは、あらゆる業界の人々の成長を後押しするAIを提供し続けることを目指しています。