卵子染色体維持におけるヒストン修飾の新たな発見とは

最近の研究で、卵子の染色体におけるヒストン修飾の役割について新たな知見が得られました。この研究は、九州大学と近畿大学、旭川医科大学、理化学研究所、東京大学などの共同チームによって行われました。

研究の背景

卵子は受精後に正常に発生するために、染色体の正しい分配が必要不可欠です。この過程で起こる異常は、不妊症や流産の原因の一つとされています。特に成熟卵子（MII期卵）は受精直前の重要な段階であり、ここで染色体を安定して分配する仕組みが求められます。従来、ヒストン修飾の一つであるH3K4me3は主に遺伝子発現の制御に関わるとされてきましたが、MII期卵においても関与していることが確認されました。

研究の内容

研究チームは、マウスの成熟卵子を用いてH3K4me3の分布と染色体の位置を詳細に分析しました。その結果、H3K4me3が卵染色体の皮質側に蓄積し、特定の染色体上での局在パターンを示すことがわかりました。さらに、H3K4me3が染色体の安定性maintainingや紡錘体の機能に寄与していることを確認しました。

また、H3K4me3を卵子から除去したところ、紡錘体が不安定になり、正常な胚へ発生する能力が著しく低下しました。このことから、H3K4me3は卵子の染色体分配を担う重要な役割を果たしていることが示されています。

老化との関係

さらに、この研究では高齢のマウスの卵子においてH3K4me3のレベルが低下していることが新たに発見されました。これは、加齢に伴う卵子の品質低下の原因となりうる要因の一つである可能性が示唆されています。

研究の意義

本研究の成果は、今後の不妊治療や流産予防に向けた新しいアプローチを切り開くものと期待されています。特に、ヒストン修飾を標的とした新しい治療法の開発が見込まれています。

今後の展望

H3K4me3の新たな機能についての理解を深めることは、卵子の正常発生への理解を深め、将来的には多くの女性にとって希望の光となることでしょう。また、ヒストン修飾に関連した研究が進展することで、今後の医療においても有益な結果をもたらすことが期待されています。

この研究成果は、2025年5月29日に米国の「Journal of Biological Chemistry」に掲載される予定です。今回の発見は、学生さんとの観察から始まり、多くの支えを受けてここまでたどり着いたものだと、宮本教授は感謝の意を表しています。