温めて飲む酒が生み出す新たな日本酒の楽しみ方とは

日本酒の温める文化の再評価

日本酒の文化は、世界的にもユニークです。そのひとつが「温めて飲む酒」という習慣。日本には古くから、寒い季節にお酒を温めて楽しむ文化が根付いており、これは単なる飲み方ではなく、深い意味を持つ体験と言えます。最近、ユネスコ無形文化遺産に認定された「伝統的酒造り」を背景に、日本酒の魅力をさらに探求するためのイベントがさまざまに企画されています。

ワークショップで体験する温めて飲む酒

9月に開催されたワークショップでは、日本酒造組合中央会が若手飲食店関係者を招き、温かい酒の可能性を直接体験する機会を提供しました。燗酒ペアリングで名を馳せる「高崎のおかん」の店主、髙崎丈氏が講師を務め、参加者は同じ日本酒を異なる温度や酒器で味わうことで、温度や器の違いがもたらす風味の変化を感じていました。参加者からは、「料理に近い感覚で楽しめる」「温度のわずかな変化が味わいに大きく影響する」という声が上がり、その体験は日本酒に対する理解を深めました。

燗酒は味の設計と表現の手段

髙崎氏は燗酒について、「単にお酒を温めることではなく、味を設計する行為」と説明しました。特に「ぬる燗」と呼ばれる低めの温度では、日本酒が持つ酸味や旨味、香りのバランスが際立つことが分かります。わずかな温度差が全体の印象を大きく変えることを体感し、参加者はその技術の奥深さに驚きを隠せませんでした。

酒器による味わいの変化

さらに、試飲会では陶器や錫、ガラスといった異なる酒器を使用することで、香りや余韻の立ち方に差が生まれることも強調されました。髙崎氏が海外での経験を交えて、燗酒の表現力の豊かさについて語る姿は、参加者に強い印象を残しました。

冬にぴったりの燗酒のペアリング

冬になると、日本の煮物や鍋料理、焼き魚といった温かい料理との組み合わせが、燗酒の魅力を一層引き立てます。美味しい料理と共に楽しむことで、燗酒の余韻がより一層感じられ、食中酒としての新しい可能性を再認識することができるのです。

本格焼酎のお湯割りも体験

このワークショップでは、日本のもう一つの酒である本格焼酎のお湯割りについても触れられました。本格焼酎の風味をどのように引き立てるか、温度や割り方の工夫について、宮崎で「國酒松」を営む小松山龍辰氏が解説しました。温度による香りや口当たりの変化についての実際の経験が、新たな飲み方の可能性を開くきっかけとなりました。