スペースデータとKDDIが挑む新たな宇宙開発
株式会社スペースデータとKDDI株式会社は、2025年4月から10月までの約半年間、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)との協力の下、バーチャル国際宇宙ステーション(バーチャルISS)内でロボットの動作実証を行います。これにより、実際の国際宇宙ステーション(ISS)で稼働している宇宙ロボットをバーチャル空間で再現し、操作する技術を開発しました。本実証実験の目的は、宇宙開発の現場での効率的な運用を可能にすることです。
バーチャルISSの役割
バーチャルISSは、高精度の三次元空間情報を持ったデジタル環境であり、ISSの物理環境を模擬することができます。これにより、宇宙ロボットの動作シミュレーションや宇宙飛行士の訓練、その他さまざまな分野での利用が期待されています。スペースデータはこの技術を、宇宙へのアクセスをより身近にするために活用し、誰もが宇宙開発に参加できる未来を描いています。
実証実験の内容
実証実験では、JAXAが運用する宇宙ロボット「Int-Ball2」を使用し、実際の操作コマンドをバーチャルISS内のロボットに送信します。その結果、バーチャル空間でのロボット動作と実際のISS内での動作を比較することで、バーチャルISSの再現率向上を目指します。このプロジェクトを通じて、無重力や真空、宇宙放射線など、過酷な宇宙環境をも模擬し、宇宙探査や研究に必要なデータを提供します。
MWC Barcelona 2025での展示
また、2025年3月3日から6日まで、スペイン・バルセロナで開催される世界最大のモバイル関連展示会「MWC Barcelona 2025」において、バーチャルISSのデモンストレーションが行われる予定です。企業パートナーを招待し、その活用方法や新たな機能の実装についての意見を集め、さらに高機能なバーチャルISSの開発を進めていくことが目的です。
宇宙産業への影響
近年、政府は1兆円規模の「宇宙戦略基金」を創設し、2040年には宇宙市場が1兆ドルに達すると予測しています。しかし、宇宙環境には特有の困難があり、事業化に向けた検証が難しいことから、参入を躊躇う企業も多く存在します。スペースデータとKDDIはこの課題に取り組み、バーチャルISSを通して既存の問題を解決する新たな枠組みを提供しようとしています。
参加企業と各種支援
KDDIは2024年5月30日より、スタートアップ及び事業会社と共同で宇宙技術を利用し、地上の課題解決を目指す「MUGENLABO UNIVERSE」プログラムを立ち上げます。このプログラムにおいて、スペースデータが構築したシミュレーション環境を利用し、企業が開発する宇宙ロボットや建築物のデジタル実証をサポートします。
このような取り組みにより、宇宙事業の参入障壁を下げ、多くの企業や研究機関が宇宙開発に携わることができるよう支援しています。
まとめ
スペースデータとKDDIの取り組みは、これまで以上に多様な企業が宇宙にアクセスしやすくするための新しい基盤を構築することを目指しています。バーチャルISSの実証実験を通じて、より効率的で安全な宇宙開発を実現することで、持続可能な宇宙社会の実現に向けた一歩を踏み出しています。