IBMが発表した新たな耐量子暗号標準
2024年8月13日、米国商務省の国立標準技術研究所(NIST)が発表した最初の耐量子計算機暗号標準において、IBMが開発した2つのアルゴリズムが正式に公開されました。これらの新しい暗号標準は、量子コンピュータの急速な進化に応じ、サイバー攻撃からデータを守る重要な役割を果たすことが期待されています。
新しいアルゴリズムの概要
公開されたのは、ML-KEM(当初の名はCRYSTALS-Kyber)とML-DSA(元はCRYSTALS-Dilithium)の2つです。これらはIBMの研究者が業界と学術界のパートナーと協力して開発したものです。また、SLH-DSA(当初はSPHINCS+の名で提出された)も含まれています。更に、FN-DSA(元はFALCON)の標準化も見込まれています。これらのアルゴリズムは、量子コンピュータによるサイバー脅威に対抗するための重要なステップとなります。
量子コンピュータと暗号の関係
量子コンピュータの技術は進化を遂げており、従来の暗号技術が破られる可能性が高まっています。IBMの量子技術部門を率いるジェイ・ガンベッタは、「量子コンピュータの進化は、セキュリティの在り方に劇的な変化をもたらす」と述べています。新たに公開された耐量子暗号標準は、これらの脅威に対抗するための具体的な対策として位置づけられています。
NISTの取り組み
NISTは2016年から、耐量子暗号スキームの開発を世界中の研究者に呼びかけてきました。2022年には69件の提案の中から、IBMのアルゴリズムも含む4つの暗号技術が選ばれ、正式に発表に至ったのです。この発表は、国や企業が新しいサイバーセキュリティ戦略を採用する際の指針となるでしょう。
IBMの将来計画
IBMは今後も、自社製品への耐量子計算機暗号の統合を進めていく計画です。2023年には「IBM Quantum Safeロードマップ」を発表し、耐量子技術に関する三段階の青写真を示しました。この中には、暗号資産の情報を特定・交換するための新しい標準の導入なども含まれています。
最後に
IBMのアルゴリズムがNISTにより初めて公式に発表されたことは、量子セキュリティの未来に向けた重要なマイルストーンです。量子コンピュータ技術の進化に伴い、今後もサイバーセキュリティの分野での技術革新が期待されます。IBMは、情報の安全を確保するための取り組みを継続し、量子技術の進展を見据えたシステムの開発に力を入れています。
詳細については、
IBM Quantum Safeテクノロジーをご覧ください。