新たな可能性を秘めた人工強磁性細線
岐阜大学の研究チームが、層厚を精密に制御した人工強磁性細線の作製に成功しました。この成果は、次世代の大容量メモリや高性能磁気センサーの開発に向けた重要な一歩となります。
研究の背景
近年、スピントロニクスに基づく情報記録デバイスが注目されています。特に、三次元磁壁移動型磁気メモリの開発が期待されており、そこでは1本の細線が数ビットのデータを記録します。このため、層厚を精密に制御できる人工強磁性細線の技術が求められていました。
実際、従来の技術では層厚の制御が十分に行えず、メモリの性能向上が図れないという課題がありました。しかし、今回の研究では二浴電析法を使用することで、層厚が最小で約3.5nmの細線を作製することに成功したのです。
研究の成果
この研究は、岐阜大学の大学院自然科学技術研究科の川名梨央さんと大口奈都子さん、また名古屋大学や早稲田大学の研究者たちによって行われました。彼らは、コバルト-プラチナ合金の多層構造細線を二浴電析法と細孔ナノテンプレートを用いて作製しました。この方法により、これまで実現が難しかった層厚の制御が可能となったのです。
細線の直径は約130nmで、層が綺麗に積層されていることが確認されました。研究チームはさらに、細線に電極を取り付けて磁気抵抗を測定。この結果、細線の層厚を薄くすることで磁気抵抗比が増大することを確認しました。これにより、次世代の磁気メモリやセンサーとしての利用が期待されます。
今後の展望
本研究の成果は、2025年3月20日にApplied Physics Expressに掲載されました。人工強磁性細線の層厚を制御する技術は、省エネルギーで高密度な次世代情報記録デバイスへの応用が期待されています。また、これまでにない小型化が可能になることから、さらなる技術革新が見込まれています。
研究者の意義
川名さんはこの結果について、「今後の情報技術の進展に寄与することを願っています」と話しています。これまでに課題とされてきた層厚制御の技術を実現したことは、学術的にも産業的にも大きな意義があります。今後はこの技術を基に、更なる研究と開発が進められていくことでしょう。