音の響きで早期発見!軽度認知障害に挑む新しい検査法
近年、高齢化が進む中で、認知症の早期発見は社会的に大きな関心を集めています。その中で、順天堂大学と電気通信大学の研究グループが開発した新たなスクリーニング手法が注目されています。この手法は、オノマトペを用いた「Sound Symbolic Word Texture Recognition Test(SSWTRT)」を活用し、軽度認知障害(MCI)の早期発見に寄与する可能性があります。
1. なぜオノマトペなのか?
オノマトペとは、音が表現する意味を持つ言葉のことです。「ふわふわ」や「ザラザラ」など、人々は物体の質感を表現する際に自然と使います。この能力は、感覚情報と強い関連性を持ち、脳の認知機能に変化が現れると、その選び方が影響を受けることが知られています。これに着目した研究者たちは、質感の認識を通じて認知機能を評価する方法を探求しました。
2. 研究の概要
順天堂大学医学部附属病院で行われたこの研究では、233名の高齢者を対象にSSWTRTを実施しました。参加者には、12種類の素材の拡大画像が提示され、その中から最も適したオノマトペを選んでもらいます。この結果を基に、従来のMMSE(Mini-Mental State Examination)スコアとの関連を分析しました。
特に、サポートベクターマシン(SVM)という機械学習アルゴリズムを用いた結果、分類モデルの精度は0.71、F1スコアは0.72という高い数字を叩き出しました。この成果は、認知機能の評価において新たな可能性を示すものであり、医療現場での活用が期待されています。
3. 従来手法の限界と革新
従来のMMSEは、専門のスタッフと多くの時間を要します。そのため、大規模なスクリーニングを実施するのが難しく、特に「認知症と診断されること」に対する心理的抵抗も影響し、受診の遅れにつながります。これに対し、SSWTRTは短時間で簡便に実施できるため、介護現場や高齢者健康診断などの場での導入が期待されます。
4. 手法の成果と将来の可能性
本手法では、精神的な負担を軽減しつつ、MMSEと同等の精度を達成しました。また、SHAP分析を実施することで、特定の質感画像への反応が分類に大きく寄与していることが明らかになりました。この結果は、医療現場や公共機関による認知症スクリーニングの新しい基盤を提供するものです。
今後は、アルツハイマー病などの他の認知症に対してもこの手法を適用したり、多言語対応を進めて国際展開を図る計画も立てられています。さらに、健康診断などでの使用によって、認知症に対するスティグマを軽減することも目指されています。
5. 研究者たちの願い
この研究を行った中島円准教授は、「質感をオノマトペで表現することで、被験者が心理的な抵抗を感じることなく検査を受けられることが重要です。早期に認知症のリスクを発見し、適切な措置を講じることができれば、今後の医療や介護においても大きな助けになるでしょう」と話しています。
このように、新たなアプローチによって認知機能低下の早期発見が可能になる未来が期待されます。認知症の診断や予防のための研究が進む中で、この技術はますます重要な役割を果たすことでしょう。