東京都における蓄電コンクリートの新たな展開。
東京都が進める「GX関連産業創出へ向けた早期社会実装化支援事業」において、會澤高圧コンクリート株式会社と米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)が共同開発を進めている「蓄電コンクリート」が支援対象に採択されました。この発表は8月20日に都の産業労働局から公式に行われました。
本事業の正式名称は「コンクリートを蓄電池に変える“蓄電コンクリート”を活用した分散型充放電インフラの開発と実証」です。東京都は「電力を減らす、作る、ためる」というスローガンの下、GX関連産業の創出を主要な柱とした産業・環境政策にフォーカスしています。特に、住宅分野におけるコンクリートの蓄電池化技術は大きな可能性を秘めていると評価され、都は今後2年間で総額2億円を支援する予定です。
蓄電コンクリートとは?
蓄電コンクリートは、コンクリートに導電性を持たせることで蓄電機能を付与し、建築物や都市インフラそのものをエネルギー貯蔵装置に進化させる新技術です。再生可能エネルギーが普及する中、発電と消費の時間的な不一致を解決する手段として注目されています。この技術は都市構造体に蓄電機能を組み込み、GXを推進しながらレジリエンス強化にも寄与することが期待されています。
具体的な開発内容
今回の支援採択により、會澤高圧コンクリートは以下の3つの柱を中心に東京都におけるGXモデル実現に向けた実証的プロジェクトを推進します。
1. 標準蓄電モジュールの開発
このプロジェクトでは、蓄電コンクリートの基本構造を一体化した「標準蓄電モジュール」を開発します。このモジュールは、蓄電ハウジングの自由設計や戸建住宅向け蓄電開発の基盤技術となります。具体的には、蓄電容量が300Wh/m³、100V級出力の蓄電コンクリート1m³スケールの標準ユニットを試作し、実用性を評価します。
2. 自由設計による蓄電ハウジング開発
集合住宅や公園など公共性の高い場所に設置可能な、蓄電コンクリートを使ったベンチやモニュメントなどの開発を行います。このデザインはコンクリート3Dプリンターを用いて自由に設計可能であり、意匠性や施工性、耐久性を兼ね備えた商品化を目指します。特に、非常時には地域のエネルギー供給拠点として機能し、都市の防災力向上に貢献することを狙っています。
3. 戸建住宅向け蓄電ユニットの開発
戸建住宅用に特化した蓄電ユニットを開発し、各家庭による再生可能エネルギーの蓄電と自家消費を実現します。これにより、東京都の太陽光パネル設置義務化に伴う余剰電力を有効活用し、停電時にも最低限の生活機能を維持可能にします。これによって、各家庭の防災力を高め、都市全体の電力インフラの強化にも繋げます。
さらなる展望
これらの3つのプロジェクトを基に、蓄電コンクリートの社会実装を加速させていく方針です。特に、2023年9月25日には「蓄電コンクリート工業会」を設立し、技術の全国的な普及を目指します。この工業会の設立総会では、標準蓄電モジュールの初号機を披露する予定です。
會澤高圧コンクリート株式会社について
會澤高圧コンクリートは革新・挑戦・信頼を理念に、新たな企業価値を創造する総合コンクリートメーカーです。自己治癒コンクリートや3Dプリンターを用いた新技術を通じて、伝統的な素材産業からスマートマテリアルを核としたイノベーションを進めています。この取り組みは、2025年3月期の売上高241億円に繋がることが期待されています。
此外、彼らの研究開発活動は、未来に向けた持続可能な社会を形成するための重要な一歩であるとも言えるでしょう。