IHIグループ、アンモニア燃料エンジンでCIMAC会長賞を受賞
IHIとそのグループ会社であるIHI原動機が、スイスのチューリッヒで開催された「CIMAC Congress 2025」で、アンモニア燃料を利用したエンジン開発に関する講演を行い、CIMAC会長賞を受賞しました。この受賞は、日本の企業や学術機関にとって初めてのことであり、特に日本のエンジン業界にとっては画期的な成果となります。
CIMAC(国際燃焼機関会議)は、1951年に設立された、内燃機関に関する研究・開発のための国際会議であり、3年ごとに世界各地で開催されています。今回の会議では210件以上の発表が行われ、IHIの講演はその中でも注目を集めました。
アンモニア燃料エンジンの意義
地球温暖化の進行に伴い、エネルギー源の多様化と環境への配慮が求められています。特に、従来の重油を使用したエンジンから、カーボンフリーのアンモニアへの転換が真剣に検討されています。アンモニア燃料は、燃焼時にCO2を排出しないため、環境負担を大幅に軽減する可能性を秘めています。ただし、アンモニアの燃焼性は重油よりも低く、燃料転換には技術的な課題が存在しました。
このような課題を克服すべく、IHIとIHI原動機は2020年度からアンモニア燃料を利用した4ストロークエンジンの実証試験に取り組みました。具体的には、RCEM(急速圧縮膨張装置)を用いてアンモニア燃料の着火条件を調査し、単気筒試験機でその燃焼条件を確立しました。
グリーンイノベーションへの貢献
2021年度からは、NEDOが推進する「アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の開発」プロジェクトに参画し、実証エンジンの開発を進めました。2023年4月にはIHI原動機の太田工場で陸上運転試験を開始し、2024年2月にはエンジン2台を出荷。商業ベースでの利用を前提としたアンモニア燃料タグボート「魁」が同年8月に就航し、横浜港での実証航海を行いました。これにより、アンモニア燃料混焼率は90%以上、最大で約95%に達し、排出される有害物質も飛躍的に低減しました。
未来への展望
IHIグループは、今後もアンモニア燃料の実用化を進め、カーボンフリー社会の実現に向けた技術革新を続けていく考えです。質の高いインフラを提供し、国際的な環境負荷の低減に寄与することを目指しています。今回のCIMAC会長賞受賞は、その取り組みが国際的にも認められた証と言えるでしょう。
授賞式では、CIMAC会長のMr. Boomや前会長のMr. Heimと共に、IHI原動機の増田主査が出席し、受賞を喜び合いました。この業績は、日本のエンジン業界に新たな可能性を示すものであり、今後の展開に大いに期待が寄せられています。