量子コンピューターの革新技術
2025-06-09 14:08:16

量子コンピューターの未来を支えるCMOS集積回路の革新技術とは

量子コンピューターの未来を支えるCMOS集積回路の革新技術



国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)から、量子ビットの制御に関する新たな技術が発表されました。先端半導体研究センターの更田裕司上級主任研究員と森貴洋研究チーム長によるこの研究では、極低温環境でのマイクロ波信号の制御を効率化するシリコンCMOS集積回路が開発されました。進化する量子コンピューターの大規模化を後押しする期待が寄せられています。

量子コンピューターの需要と課題



量子コンピューターは、その計算能力から注目を集めている技術であり、特に特定の問題に対して従来のコンピューターよりも著しい速さで解決が可能と言われています。しかし、実用的な構築には、100万個以上の量子ビットが必要とされています。各量子ビットは、絶対零度近くまで冷却されている冷凍機内でマイクロ波信号によって制御されますが、量子ビットの数が多くなるにつれて、必要な信号を伝送するためのケーブルも増えるため、さまざまな課題が生じました。

課題の詳細


これにより、冷凍機内へのケーブルの物理的な取り込みの限界や、ケーブルを通じて伝わる熱による冷却の問題が深刻な障害となっています。今後の大規模な量子コンピューターの実現に向け、このような課題解決へ向けた技術が期待されます。

開発されたCMOS集積回路の特長



今回開発された信号選択用CMOS集積回路は、冷凍機内で多重化された量子ビット制御用マイクロ波信号から必要な信号を選び取る仕組みを持っています。具体的には、室温において生成されたマイクロ波信号を1本のケーブルに多重化し、冷凍機内で特定の周波数の信号を取り出すことが可能です。実験の結果、従来の方式と比較してケーブル数を18分の1に削減することに成功しました。

省電力化と製造コストの削減



このCMOS回路は、一般的なシリコンCMOS製造技術を利用しているため、低コストでの大量生産が可能です。また、冷凍機内にマイクロ波生成回路を設置する従来の方法に対し、冷凍機への負担を大幅に軽減でき、電力消費を30分の1に抑えることができます。これにより、冷却性能を改善し、高速かつ高効率な量子コンピューターの実現に向けた基盤を築くことができます。

未来の展望



今後、開発された回路を実際の量子ビットと接続し、状態制御動作の実証実験を進める予定です。本技術は、次世代のコンピュータ技術として、量子計算やAI関連の研究にも大いに貢献することが期待されます。最終的には、量子コンピューターをより実用的かつ効率的に動作させるための新たな道を切り開くことでしょう。

学術発表の予定



この成果は、2025年6月8日から12日にかけて京都で開催される「IEEE Symposium on VLSI Technology and Circuits」で発表される予定です。
発表タイトルは「0.25 mW/qubit, 5.7-7.5 GHz Cryogenic CMOS Microwave Signal Selector using Dual-Stage Injection-Locked Oscillator for Frequency-Multiplexed Qubit Control」で、注目の内容となっています。

新たに発展する量子コンピューターの技術に、今後も目が離せません。


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