失われたタンパク質構造「DZBB」の発見:生命進化の謎を解く鍵
生命は、DNAに刻まれた遺伝情報に基づいてタンパク質を合成することで機能しています。この複雑な遺伝子発現機構は、生命誕生から長い年月を経て進化してきたと考えられています。しかし、その進化の過程は、多くの謎に包まれています。
早稲田大学と理化学研究所の共同研究グループは、この謎を解き明かす重要な発見をしました。彼らは、遺伝子発現に関わるタンパク質の進化を研究し、これまで知られていなかった新しいタンパク質構造「DZBB」を発見しました。
DZBBは、RNAポリメラーゼやリボソームタンパク質など、遺伝子発現に不可欠なタンパク質の進化過程における「ミッシングリンク」と考えられます。研究グループは、DZBBからRNAポリメラーゼやリボソームタンパク質などの重要なタンパク質構造へと進化する道筋を実験的に再現することに成功しました。
この発見は、生命誕生から続く長い進化の歴史を解き明かす重要な一歩となるでしょう。さらに、DZBBは、コンピュータによるタンパク質構造予測技術では予測できない構造であったため、タンパク質科学分野の発展にも貢献する可能性を秘めています。
今後の研究:タンパク質と核酸の共進化を探る
研究グループは、今後、DZBBがどのようにDNAやRNAと結合し、機能するのかを明らかにすることを目指しています。タンパク質と核酸の相互作用を解き明かすことで、生命誕生から続くタンパク質と核酸の共進化の謎に迫ることができるでしょう。
研究者たちの熱い思い
研究を率いる八木講師は、生命の起源という究極の問いへの挑戦を続け、実験を通して新たな発見を続けています。計算科学による研究が進展する一方で、実験的検証の重要性を改めて示す成果となりました。
発見された「DZBB」構造が持つ可能性
「DZBB」構造は、生命進化の謎を解く鍵となるだけでなく、タンパク質科学や創薬など、様々な分野で応用が期待されています。今後の研究によって、この構造が持つ可能性がさらに明らかになっていくでしょう。
参考文献
- - 八木 創太、田上 俊輔. An ancestral fold reveals the evolutionary link between RNA polymerase and ribosomal proteins. Nature Communications, 2024.
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