計算科学が導入したL-メントールの新たな製造方法
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と天野エンザイム株式会社が共同で進めていた研究の結果、L-メントールを効率的に高純度で生産する酵素の開発に成功しました。この成果は、計算科学を駆使したアプローチで、これまでの技術を大きく超えるものです。
L-メントールの重要性と市場背景
L-メントールは独特の香りと清涼感、さらには鎮痛効果があるため、食品、化粧品、医薬品などの多様な分野で利用されています。それに伴い、2025年末には市場規模が約11億5900万ドルに達すると予測されています。従来はハッカやミントからの抽出が主流でしたが、需要増大に伴い工業生産へのシフトが迫られています。
新たな酵素技術の開発
今回の研究では、産総研が手掛ける計算手法を基に、L-メントール合成に必要不可欠なBurkholderia cepacia lipase(BCL)の改良型を開発しました。この酵素は従来のプロセスと比較し、環境との調和を保ちながら、経済的利益ももたらすことが期待されています。
酵素の改造には、分子動力学シミュレーション(MD)を活用し、アミノ酸の変化によって酵素機能を向上させることを必要としました。これにより、従来のL-メントール合成過程における不純物であるD-メントールの比例を最低限に抑えることが可能となりました。
MDシミュレーションと試験
研究では、L-メンチル酢酸とD-メンチル酢酸の両者に結合可能な酵素の特性を考慮し、どのアミノ酸を変更するかを計算しました。こうした新しいアプローチによって、生成されるL-メントールの純度を最大99.4%にまで引き上げることに成功したのです。
さらなる展開と未来のビジョン
天野エンザイムは、今回の成果をもとに改良型酵素を含む製品化を進めています。また、この研究の詳細は2025年2月26日に「Journal of Agricultural and Food Chemistry」で紹介される予定です。この技術は、今後の環境に優しい生産プロセスの実現に貢献し、業界全体に新たな革新をもたらすと考えられています。
総まとめ
計算科学の進展がもたらした新技術観は、L-メントールの合成を効率化し、環境に配慮した製品づくりに寄与する重要な一歩です。今後の研究開発に期待が高まります。