キニノーゲンが血圧を調節する新しい役割
最近の研究により、神戸学院大学薬学部の鷹野教授をはじめとする研究チームは、蛋白質「キニノーゲン」が血圧の調整に重要な役割を果たしていることを明らかにしました。この研究は、特に高血圧のメカニズムを理解し、今後の治療法への応用に大きな影響を与えることが期待されています。
研究の背景
血圧管理は心血管疾患における重要な課題であり、さまざまな研究が行われています。特に、ブラジキニンという生理活性ペプチドが知られているように、炎症時に血管を拡張し、血圧を下げる作用があります。しかし、普段の血圧への影響については明らかにされていませんでした。そこで、鷹野教授の研究チームは、キニノーゲンというブラジキニンの前駆体に注目しました。
研究の方法
この研究では、CRISPR/Cas9技術を使用して、マウスの二つのキニノーゲン遺伝子(Kng1とKng2)を欠損させた「キニノーゲン二重欠損マウス」(KNG-DKO)を作製しました。このマウスは、ブラジキニンを生成できない状態となり、血圧にどのような影響が出るのかを詳細に調査しました。
主な研究成果
研究の結果、以下のような重要な発見が得られました:
1.
キニノーゲンの消失:KNG-DKOマウスの血中から高分子および低分子のキニノーゲンが完全に消失し、ブラジキニン生成能力がゼロであることが確認されました。
2.
高血圧の確認:生後8週齢のマウスに対する血圧測定を行ったところ、KNG-DKOマウスの血圧は130±12 mmHgと、野生型の105±5 mmHg、Kng1またはKng2単独欠損の115±7 mmHgに対して約25 mmHgの上昇が見られました。心拍数はほぼ変化がなく、血圧の上昇が顕著でした。
研究の意義
この研究により、キニノーゲンが日常の血圧を維持する重要な分子であることが初めて示されました。また、ブラジキニンは「炎症時」だけでなく「普段から」血圧を下げる効果を持つことがわかりました。これにより、高血圧の新たな治療法としての可能性や、個別化医療への応用が期待されています。
今後の展望
この研究の成果を受けて、今後期待される展開には以下のようなものがあります:
- - 高血圧の新規治療標的の探求
- - 遺伝子多型に基づく個別化医療への応用
- - ブラジキニン系を利用した新しい降圧薬の開発
鷹野教授のコメント
鷹野教授は、「キニノーゲンが血圧を調整する重要な因子であることが示され、この研究が高血圧の理解に新しい視点を提供することを期待しています。この成果が将来的には心血管疾患の治療に革新をもたらす可能性があります」と述べています。
論文情報
この研究の結果は、2025年12月17日付の国際医学誌『Hypertension』に掲載予定で、論文タイトルは『Kininogen Deficiency Elevates Blood Pressure in Mice』です。著者には、鷹野教授や大中助手、塚本智史課長などが名を連ねています。DOIは
10.1161/HYPERTENSIONAHA.125.26043です。
研究支援
この研究は、神戸学院大学薬学部細胞分子生物学研究室と量子科学技術研究開発機構(QST)の共同研究によって進められました。また、科学研究費補助金(KAKENHI 24K12592)による支援も受けています。
本研究に関する問い合わせは、神戸学院大学薬学部細胞分子生物学研究室の鷹野教授までご連絡ください。〒650-8586 神戸市中央区港島1-1-3、Email:
[email protected]