眼底検査の読影負担を軽減!AIが医師をサポート
急速な高齢化社会の到来により、緑内障や白内障、加齢黄斑変性など、眼科疾患を抱える患者数は増加傾向にあります。一方で、眼底検査画像を読影できる眼科専門医は慢性的に不足しており、特に健診における眼底検査では、医師が検査結果を電子カルテ等に入力する作業に多くの時間を割かざるを得ない状況です。この負担は、医師の長時間労働につながり、深刻な問題となっています。
この課題解決に向けて、自治医科大学と、同大学発ベンチャーのDeepEyeVision株式会社は、画期的なシステムを開発しました。このシステムは、大規模マルチモーダルモデル(LMM)を活用し、眼底検査画像から疾患名と読影所見を自動生成します。
LMMは、従来の自然言語処理に加えて、画像や音声、動画などの複数の情報(モダリティ)を処理できる技術です。このシステムでは、眼底画像だけでなく、患者の年齢、性別、既往歴などの問診情報も同時に分析し、適切な検査所見案をテキストとして出力します。医師はこの出力結果を参考に、読影作業を行うため、従来に比べて読影時間を大幅に短縮できます。
働き方改革と質の高い医療提供の実現
本システムは、医師の働き方改革に大きく貢献すると期待されています。読影にかかる時間の短縮は、医師の負担軽減につながり、より多くの患者を診ることができるようになります。また、AIによる所見案の自動生成は、読影の精度向上にも役立ちます。医師は、AIによる客観的な所見を参考に、より正確な診断と治療を行うことが可能になります。
さらに、AIによる所見の標準化は、患者への説明の質向上にもつながります。患者は、より分かりやすく、正確な説明を受けることができるため、安心感と満足度を高めることができます。
社会実装に向けた取り組み
自治医科大学とDeepEyeVisionは、2024年度中に、自治医科大学健診センターなどで本システムの試験運用を開始する予定です。また、DeepEyeVisionが提供する眼底画像遠隔読影サービスにも組み込み、読影時間の短縮など、定量的な効果測定を進めていきます。
医療現場におけるAI活用の未来
本システムは、医療現場におけるAI活用の可能性を示す、重要な一歩です。今後、AI技術の進化とともに、より高度な医療支援システムが開発されることが期待されます。AIは、医師の負担軽減、医療の質向上、患者の満足度向上など、様々な面で貢献し、より良い医療の提供を実現する可能性を秘めています。