ガンマ波サウンドがもたらす認知症治療の新たな扉
はじめに
介護老人保健施設「国立あおやぎ苑」(東京都国立市)は、最新の技術を活用した新しい認知症ケアに取り組んでいます。2023年12月から導入されたテレビスピーカー「kikippa」は、音声を40Hzに変調することで、認知症患者に特有の周辺症状(BPSD)への効果が期待されています。本記事では、この画期的な取り組みの詳細と、その結果についてご紹介します。
ガンマ波サウンドの仕組み
「kikippa」は、ガンマ波と呼ばれる周波数に関連する脳波を刺激することを目的としたスピーカーです。ガンマ波は、集中力や記憶に影響を与える重要な波形であり、正常な脳活動において高まるとされます。加齢や認知症により、この波形が減少することが報告されており、これに対する新しいアプローチとして注目されています。
効果検証の方法
国立あおやぎ苑では、2つのグループに分けて実験を行いました。一つは認知症が進行している患者25名、もう一つは一般病床にいる31名の患者です。前者のグループには「kikippa」を設置し、毎日約9時間にわたってガンマ波サウンドを聴かせました。その結果、BPSDが有意に改善したことが、DBD-13という尺度を用いた評価で確認されました。一方、一般病床のグループでは目立った変化は見られませんでした。
BPSDの改善と介護環境への影響
BPSDとは、認知症患者に見られる不適切な行動や発語を指し、介護現場での大きな課題の一つです。今回の検証により、ガンマ波サウンドを聴いた患者では「暴言」や「介護拒否」といった周辺症状が大幅に減少しました。この改善は、介護を行うスタッフにも良い影響を与え、職場の雰囲気を明るくする結果をもたらしました。
今後の展望
国立あおやぎ苑では、今回の検証の成果を基に、今後も長期間にわたる効果の追跡を行う予定です。この研究は、麻省理工学院(MIT)が行ったマウスに対する研究に影響を受け、新しい認知症治療の可能性を探るものです。さらなるデータが集まることで、ガンマ波サウンドの効果についての理解が深まり、治療法の選択肢が広がることが期待されています。
おわりに
介護の現場において、技術はますます重要な役割を果たしています。国立あおやぎ苑の取り組みは、認知症治療における革新的なアプローチとして、他の施設や専門家にとっても参考になる成果を示しています。今後も、このような新たなアプローチが多くの認知症患者に安らぎと向上をもたらすことを願っています。