岡山大学の研究が解明したニワトリ羽の性差の謎とは
日本の文化でも有名な絵師、伊藤若冲が描いたニワトリの美しい羽色。その美しさの裏には、科学的な理由が存在します。国立大学法人岡山大学の研究グループが行った新たな研究により、ニワトリの羽における性差の形成メカニズムが明らかになりました。この成果は、鳥類の羽色多様性の理解にも重要な役割を果たすと期待されています。
性差の形成メカニズム
キジ科の鳥類、特にニワトリやクジャクでは、オスとメスで羽色や羽の形状に顕著な違いがあることは広く知られています。オスが持つ派手な飾り羽に対して、メスは地味な色の羽を持ち、これは生存における自然選択の結果とされています。今回、岡山大学の竹内栄教授と相澤清香准教授らのチームは、ニワトリを使用してエストロゲン、つまり女性ホルモンがこの羽の性差を形成する方法を探求しました。
研究者たちは、ホルモンをニワトリに投与し、その後の羽の変化を観察しました。結果、エストロゲンが羽包内の2つのホルモン系に影響を及ぼすことで、メス型羽の形成が誘導されることが明らかになったのです。この発見は、羽の性差形成を解明するだけでなく、羽の色の多様性についての理解を深める手助けにつながります。
若冲との関連性
興味深いことに、この研究成果は日本の伝統的な美術とも関連しています。伊藤若冲の作品では、彼の描くニワトリの羽は非常に豊かな色彩を持っています。この色彩表現は、科学的な理解がなければ簡単に説明できるものではなく、今後の研究によって、若冲の作品が持つ生物学的な意味や美術としての価値が再評価される可能性が高まります。
教育と生物への理解
竹内教授は「最近、生物に対する基本的な理解や関心が薄れつつある」と懸念を示しています。特に、学生の中には鳥類の性差を知らない人も多く、誤った理解が広まっていることが心配されています。生物への理解が深まることは、自身の理解にもつながります。研究を通じて、若冲の作品をじっくりと鑑賞する時間の重要性も訴えています。
研究の今後
この研究は2024年8月23日に国際比較内分泌学会連合の機関誌に掲載され、さらに印刷版の表紙にも取り上げられる予定です。ホルモンに基づく性差の形成は依然として多くの謎を抱えていますが、岡山大学の研究により、今後も新しい知見が得られることが期待されます。さらなる研究の進展によって、科学とアートの接点に新たな光が当てられることでしょう。
岡山大学は、地域における研究や教育を通じて、持続可能な社会の実現にも取り組んでいます。これからも、生物学とアートの関係を理解するための研究が進められることが望まれます。