107年ぶりに発見された「キリシマイバラ」
このたび、宮崎県えびの市のえびの高原において、新たな野生バラとして「キリシマイバラ」(Rosa kirishimensis Yahara & Tagane)が発見されました。この新種の発見は、日本におけるバラの種の研究において大きな意味を持つものです。日本では1784年にノイバラが発表されて以来、様々なバラの種が記録されていますが、107年間の沈黙を破っての突然の新種発見に、植物学界は大いに沸いています。
キリシマイバラの特徴
キリシマイバラはヤブイバラ(R. onoei)と近似していますが、いくつかの顕著な違いがあります。以下にその特徴をまとめます。
- - 葉の裏面: キリシマイバラの葉の裏面は白色を帯びていますが、ヤブイバラはこの色合いを持ちません。
- - 花冠の寸法: キリシマイバラの花冠の直径は1.7〜3.2 cmで、ヤブイバラの1.2〜1.7 cmよりも大きいです。
- - 雄蕊の長さ: キリシマイバラの雄蕊は3.9〜9.6 mmありますが、ヤブイバラの雄蕊は4 mm未満です。
- - 花弁の色: キリシマイバラは通常、淡いピンク色を呈しますが、ヤブイバラは白色です。
これらの特徴から、キリシマイバラは明確に異なる植物であることがわかります。
検査方法と結果
研究チームは、キリシマイバラの系統的な位置を確認するために、MIGseq(Multiplexed ISSR Genotyping by Sequencing)法を用いて遺伝的分析を行いました。その結果、キリシマイバラはヤブイバラとは異なるクラスターを形成し、生殖的にも隔離された別種であると確認されました。
生息地と生存危機
キリシマイバラの自然生息地は霧島山の1150〜2000 mの範囲に限られ、これまでに約20個体しか確認されておらず、絶滅危惧I類(CR)に指定されています。自生地においては、増加するキュウシュウジカの影響により、植物の生育が危機に晒されています。これに対処するため、保護活動が必要とされています。
シコクイバラの発見
また、高知県の瓶ケ森林道では、これまでフジイバラとして知られていたシコクイバラが新たに発見され、新亜種としてその位置づけが確立されました。MIGseq法により、シコクイバラはフジイバラとは異なる独立したクラスターを形成し、その形態的な特徴も示されました。具体的には、シコクイバラはより大型の花と、幅広い小葉を持ちます。
今後の展望
これらの発見を契機に、野生バラの分類学の見直しが進むことが期待されます。今後、私たちの研究チームは日本国内のさらなる新種候補を探求し、その記載論文も発表していく予定です。バラ属の植物は園芸でも親しまれているため、この新たな知見が広く受け入れられることを願っています。また、保護活動においても、これらの貴重な種を守るための取り組みが重要になります。
新種のバラの発見は単なる植物学的な進展だけでなく、地域の生物多様性を守るための重要なステップです。野生バラの魅力を再認識し、未来の世代にこの美しさを残すために、私たち一人一人が何ができるかを考える良い機会です。新種候補植物図鑑も出版されているため、興味のある方はぜひ手に取ってご覧ください。