AIと水稲の収量
2025-09-05 14:11:26

AIが探る水稲収量変動の鍵 50年の長期試験から得た新知見

AIが探る水稲収量変動の鍵



京都大学大学院農学研究科の桂圭佑教授と岐阜大学応用生物科学部の山口友亮助教を中心とする研究チームが、フィリピンで約半世紀にわたり続けられている世界最長の長期連用栽培試験のデータを人工知能(AI)を用いて分析し、水稲収量の持続要因を解明しました。この研究は、1962年から2017年までの50年間にわたる150回以上の連続栽培データを基にしています。

研究の背景


コメはアジアの主食であり、世界中で安定した生産が求められています。しかし、人口の増加と気候変動が進む中で、収量を保ち続けることは大きな課題となっています。フィリピンの国際稲研究所で行われているこの試験は、異なる肥培管理の方法で三期作が行われており、作物生産の持続性を検証する貴重なデータを提供します。

しかし、50年にわたる複雑なデータの解析は従来の統計手法では限界があり、気候や施肥、品種間の相互作用を解明するのは困難でした。

研究手法と成果


研究チームは、最新のAI技術である「説明可能なAI」を利用しました。具体的には、気温、日射量、窒素施肥量、病害のリスクと収量との関係を分析し、乾季作、前期雨季作、後期雨季作といった各作期ごとに異なる要因が収量にどう影響しているかを調査しました。これにより、窒素施肥、品種の更新、日射量が収量持続に欠かせない要因であること、また夜間の高温が収量の低下につながっていたことが明らかになりました。

AIの解析によって、従来見えなかった長期的な要因の把握が可能になり、収量変動のメカニズムがより深く理解できるようになりました。

今後の展望と波及効果


本研究では、乾季作における、高温耐性の品種育成が急務であること、また雨季作では高湿度・低日射条件に適した品種の開発が求められていることが示されました。これらの成果は、アジア全域の灌漑水稲単作地帯における持続可能な生産に寄与するものとなります。また、今後の気候変動に備えた地域別の適応戦略にもつながることが期待されています。

研究プロジェクトの背景


本研究は、農林水産省の戦略的国際共同研究推進委託事業の支援を受けており、「ASEAN諸国におけるカーボンニュートラルと食料安全保障に向けた稲作システムの開発」プロジェクトの一環として実施されました。

用語解説


  • - 長期連用栽培試験: 1962年からフィリピン・国際稲研究所で続く、水稲の連続栽培に関する試験。
  • - 説明可能なAI: AIが出した結果の根拠を分かりやすく説明する技術。

研究者のコメント


「AIによる解析を通じて、これまで取り上げられていた要因を再確認し、それらの相互作用を包括的に理解できました。結果は、農家や研究者にとって収穫における課題をより明確に理解する手助けとなり、未来の食料安全保障に大いに貢献すると考えています。」

(京都大学大学院農学研究科 桂圭佑 教授/共同責任著者)

「農業ビッグデータの解析において、説明可能なAIの可能性を示すことができました。今後、農学分野でのさらなる信頼できる知見の抽出が期待されます。」

(岐阜大学応用生物科学部 山口友亮 助教/筆頭著者)


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