国内初のトークン化預金によるセキュリティトークン決済実証プロジェクト
日本の金融市場において、革新的な動きとして注目されているのが、株式会社SBI証券をはじめとした複数の金融機関が協力して進める新たなプロジェクトです。このプロジェクトでは、トークン化された預金「DCJPY」を利用し、セキュリティトークン(ST)の決済を実証します。特に、STの二次流通市場におけるDVP(Delivery Versus Payment)決済の方式を標準化することが目指されています。
プロジェクトの重要性
セキュリティトークン市場は、2020年に国内初のデジタル債の発行以来、急速な成長を見せています。2025年11月末には、総額2670億円にまで達すると予想されています。しかしその一方で、ブロックチェーン上でSTの受け渡しが迅速に行われることに対し、資金決済は従来の銀行振込によって行われており、証券業界では決済リスクや事務負担の低減が求められていました。
本プロジェクトでは、BOOSTRYとディーカレットDCPがシステム連携を行い、決済リスクを低減しつつ効率的な業務処理を実現する新たな決済スキームを構築します。これによって、ST市場のさらなる成長が期待されています。
実証実験の詳細
プロジェクトは、具体的には以下のステップで進められます。SBI証券と大和証券の間で行われるSTの売買取引において、DCJPYを使ったDVP決済の実証が行われます。
1. 売方証券会社がSTを仮移転します。
2. 各システム間でSTの決済情報を連携します。
3. 買方証券会社がDCJPYの発行を依頼し、専用口座に資金を振替えます。
4. 売方証券会社へのDCJPYの移転指図を実施します。
5. 決済情報を照合し、ST移転を実行します。
6. 売方証券会社は、DCJPYの償却を依頼します。
このプロジェクトで使用されるDCJPYは、銀行預金をトークン化したものであり、STの決済においては有用な選択肢になると考えられています。実証が進むにつれ、決済方法の効率化が期待されます。
プロジェクトの進捗と今後の展望
2025年8月には、関係者が一堂に会し、検証用データを用いたST社債とDCJPYのDVP決済を実施することが確認されました。この実証過程では、証券決済の業務フローが整理され、ステークホルダー間で円滑な情報共有が図られました。
今後は、STおよびDCJPYの実発行に向けた準備が続けられ、実証結果は幅広くST市場参加者に周知される予定です。今回の決済スキームが、証券業界全体における共通の決済基盤として採用されることで、市場の効率性向上とリスク低減に寄与することが期待されています。
まとめ
このプロジェクトは、国内初のトークン化預金を基にしたセキュリティトークン決済の実証を通じて、今後の金融システム改革に影響を与える可能性があります。新しい決済スキームが広まることで、ST市場の一層の発展が期待されており、今後の動きが注目されるところです。