株式会社ユー・メディコ(本社:大阪府)は、大阪大学および島津製作所との共同研究により、遺伝子治療用ベクターである組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)の血清型を高精度に同定する新しい技術を開発しました。この技術は、MALDI-TOF質量分析法を用いており、2026年3月に米国の科学雑誌『Analytical Chemistry』に掲載されました。
遺伝子治療用rAAVベクターのセロタイプ同定は、医薬品開発で規制当局から求められる重要な品質特性の一つであり、安全性や有効性に直接影響を与えます。これまで、セロタイプの同定には、特異的に血清型に結合する抗体を用いたELISA法が主流でした。しかし、抗体の開発や品質管理には高コストがかかり、ロットごとの差異により再現性に課題を抱えていました。
新たに開発された技術では、抗体を使用せず、質量分析技術によってセロタイプを同定します。この方法により、従来の再現性の問題を回避でき、さらに動物免疫を必要としないため、動物実験の削減にも寄与することが期待されています。また、多数のサンプルを簡易かつ短時間で分析できるため、研究開発から製造、品質管理において広範に活用される可能性があります。
ユー・メディコは、GMPに準拠した分析体制に本技術を組み込み、2026年からrAAVベクターの臨床開発と品質管理を支えるサービスを提供する予定です。これにより、研究成果が実運用に耐える品質評価技術として、医薬品開発や製造現場で実際に使用されることになります。
島津製作所は、分析計測機器の開発に長年取り組んできた企業であり、本技術の実装にもその専門知識と技術基盤を活かし、信頼性の高い品質評価手法を支援します。この取り組みは、大阪大学との共同研究から生まれた最先端の科学技術を、島津製作所とユー・メディコの事業に通じて社会に実装するものであり、三者による「統合的な遺伝子治療薬製造プラットフォーム」の確立に向けて重要な一歩となります。
今後も三者は緊密に連携し、遺伝子治療薬の迅速な開発と安定した製造を実現するため分析・評価技術の向上に取り組んでいく方針です。これは医療業界に革新をもたらすだけでなく、患者への治療機会を飛躍的に広げる大きな成果となるでしょう。
論文情報
- - タイトル: Identification of Recombinant Adeno-Associated Virus Serotypes by Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization Mass Spectrometry
- - 著者: 中塚遼治(島津製作所、大阪大学)、松本顕治郎(ユー・メディコ)など
- - 掲載誌: Analytical Chemistry
- - DOI: 10.1021/acs.analchem.5c05430