毛の形態形成を通して解明された新たな生体リズムの詳細
理化学研究所の生命機能科学研究センターにおいて、チームメンバーの辻孝氏を中心とした共同研究チームが、新しい生体リズムのメカニズムを毛の形態形成モデルを用いて解明しました。本研究は、特殊な毛の形態形成パターンを持つマウスを対象に行われ、出生後の毛包構造やその周囲の環境がどのように毛の成長や生質に影響を与えるかを探求。特にジグザグ毛に着目し、その形状がもつ重要性が明らかになりました。
具体的には、マウスの体毛の70%を占めるジグザグ毛の毛幹が、左右に3回曲がっているという特徴に着目。その独特な形態形成が促される新たな生体リズムを明らかにするため、ライブイメージング技術を用いて毛包内での細胞の動態を詳細に観察しました。観察の結果、毛包の毛乳頭細胞が作り出すマイクロニッチと呼ばれる微小環境が毛母細胞と相互作用し、3日ごとに切り替わることが確認されました。
さらに、毛母細胞の集団状態はこのリズムに従って変化することがわかりました。この新しいメカニズムは、生体リズムが発生過程や器官形成においてどのように機能するかを示す重要な発見です。加えて、加齢によってこのリズムに乱れが生じ、毛質に個人差が生まれる要因も解明されています。
本研究の成果は、生命現象に内在する生体リズムが、さまざまな発生現象に関与していることを示しており、特に毛質の変化に対する新たな予防法の確立に寄与することが期待されています。個人の毛の質が年齢とともに変わるメカニズムを解明することで、より健康的で質の高い毛を維持するためのアプローチが見えてくるでしょう。
この研究成果は、オンライン科学雑誌『Nature Communications』に掲載されました。この革新的な研究が、今後の医療や美容分野にどのように応用されるか、今後の発展が非常に楽しみです。
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