人工衛星「だいち2号」による国土のSAR基盤モデル構築が実現
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)及び宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、日本の国土に特化した合成開口レーダー(SAR)基盤モデルを構築しました。この取り組みは、人工衛星「だいち2号」に搭載されたPALSAR-2のSAR観測データを活用し、大規模なAIクラウド計算システム「ABCI」を用いることで可能になりました。
SARデータ活用のための基盤モデルの構築
SARは、高解像度で昼夜を問わず観測できる技術で、特にLバンドのマイクロ波は森林などの地表観測に適しています。今回の研究は、日本の特性を考慮し、特定の土地利用や土地被覆の偏りを避けた学習データの均等化を目指しました。具体的には、事前に選定した地点から画像パッチを抽出し、多様な土地利用のデータセットを構築しました。これにより、国土特有の特徴を捉えた基盤モデルが作成されました。
AIによるSAR画像解析の敷居を下げる
この基盤モデルの大きな利点は、専門的な知識がなくてもSARデータを容易に解釈できる点です。AI技術を利用することで、SAR画像の判読作業が簡便になり、様々な分野での活用が促進されることが期待されています。実際に、構築した基盤モデルを使用した土地利用・土地被覆推定では、高い精度の結果が得られ、AIを活用した分析の有効性が確認されました。
プロジェクトの背景と社会的課題
SARデータの広範な利用は、特に日本のように森林が多い国において重要です。これまで、SARデータの活用には専門的知識が必要であり、AI導入のハードルが高い傾向にありました。このため、手軽に使える基盤モデルの開発が急がれていました。今回の研究は、産総研とJAXAが結んだ協定のもとで進められ、研究成果は2025年に行われる「日本リモートセンシング学会第78回学術講演会」で発表される予定です。
今後の展望
今後は、開発した基盤モデルを基に、災害検知や都市の変化の観察など、多様な応用が進められる予定です。また、AIが得た情報を人間が理解しやすい形で提供できるようにすることも目指し、異なるデータタイプ間での情報統合の研究も行われます。これにより、専門知識なしでもSARデータの利用が容易になり、さらなる利用拡大が期待されています。
この革新的な取り組みは、より直感的かつ迅速なSARデータの利用を進め、日本の国土に関する理解を深める一助となるでしょう。