HR総研(ProFuture株式会社)が発表した人的資本調査2024は、企業の人的資本経営についての重要な洞察を提供します。この調査は、一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアムやMS&ADインターリスク総研、さらに一般社団法人人的資本と企業価値向上研究会との共同で実施され、昨年の8月から12月にかけて行われました。今年で3回目を迎えるこの調査には、380社以上がエントリーし、その中の206社からの有効回答を得ています。この調査の主な目的は、企業が人的資本をどのように管理・開示しているか、そしてその取組みの現状を把握することです。
調査は「人的資本経営の推進」、「人材戦略に基づく人的資本投資の実行」、「データドリブンなPDCAサイクル」、「戦略的開示と対話」という4つの主要分野に分かれ、それぞれについて定量的に分析されています。最も高いスコアを得たのは「職場環境への投資」であり、続いて「経営戦略と人材戦略の連動」や「企業文化の定着」に関する取り組みも評価されています。これにより、多くの企業が人的資本の重要性を認識し、その改善に向けた努力をしていることが示されました。
しかし、調査結果にはいくつかの課題も浮かび上がりました。特に「As is – To beギャップを踏まえた計画の作成」や「HRデータの収集と蓄積」に関しては、進展が見られていませんでした。これにより、企業が作成した開示戦略の質が損なわれている可能性があります。
また、「人的資本の取組と財務指標の関連データ分析」を進めていない企業は約8割に達するという驚くべき結果も見受けられます。多くの企業が財務指標にまで人的資本の影響を考慮できておらず、これが今後の成長にとって大きな障害となることが懸念されています。このことから、企業が人的資本についての状況を把握できないのは、HRシステムの整備不足が一因であると考えられます。
具体的には、「人材ポートフォリオの充足に向けた目標設定や達成までの具体的計画」が進んでいない企業が半数を超えています。これは、人的資本ストラテジーを実行するための具体的なフレームワークを持っていない企業が多いことを示唆しています。
調査結果では、「必要なKPIの可視化」を頻繁に行っている企業は25%弱にとどまり、リアルタイムまたは毎月のデータ可視化を実現している企業はわずかです。この現状は、企業が価値のある人的資本のデータを適切に管理できていないことを反映しています。
このような調査結果を通じて、企業が人的資本への投資をさらに強化するためには、戦略の再評価と同時にHRシステムの整備が求められることが分かります。人的資本は、企業の持続的な成長において重要な要素であり、その取組みの普及と向上が今後の課題となるでしょう。
なお、人的資本調査2024の全体分析レポートは、公式サイトで公開されていますので、詳細をぜひご確認ください。