中東地域における海水淡水化事業の現状
2025年1月31日、公益財団法人日本グローバル・インフラストラクチャー研究財団がオンラインセミナー「中東の海水淡水化事業の現状」を開催しました。このセミナーでは、丸紅株式会社の松井正氏が講師として登壇し、中東地域の水資源の現状や海水淡水化技術の進展について詳しく解説しました。
中東では水資源が限られており、海水淡水化プラントが生活に不可欠なインフラとなっています。海水淡水化により供給される水は、飲用にとどまらず、農業や都市緑化にも役立っています。本セミナーでは、松井氏が現地での豊富な経験をもとに、海水淡水化事業の最新の技術や課題について議論しました。
セミナーのテーマと内容
松井氏は、まず世界全体の水事情について触れ、地球上の水の大半が海水であり、利用可能な淡水は非常に限られていることを指摘しました。特に中東では水の需要が高まり、水ストレスが深刻な問題になっています。
次に、海水淡水化技術について解説しました。蒸発法や膜式技術があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。蒸発法は多段フラッシュ法や多重効用法があり、過去に多く採用されましたが、エネルギー消費が大きいとされています。一方、膜式技術は再生可能エネルギーの活用が進んでおり、具体的には逆浸透膜法(RO)が主流になっています。
松井氏は、丸紅が投資したサウジアラビアのシュケイク3プラントの例を挙げ、この技術の進化を説明しました。特に膜式技術の発展は、戦後アメリカの研究開発が契機となり、日本が世界シェアのトップに立つきっかけとなったことも紹介されました。
中東地域における海水淡水化ビジネスの展望
中東諸国の水不足と人口増加による水需要の増加は顕著です。特に、2000年代の石油価格の高騰を受け、広く使われていた蒸発法から、膜式技術とのハイブリッド型に移行が進んでいます。また、リーマン・ショック以降は再生可能エネルギーにシフトする動きが加速し、ROプラントの重要性も高まっているとのことです。
水のコストも重要なポイントです。早くから1ドル/㎥を切っていたものの、順調にコストを抑えてきたものの、コロナ後は料金が少し上昇。今後、再生可能エネルギーが水道料金の低下に寄与するかが焦点となります。さらに、生活用水だけでなく、特に石油化学など産業用途での需要が高まっていることも指摘されました。
今後の課題と質疑応答
セミナー後の質疑応答では、RO膜廃棄に関する環境問題や、マグネシウムの抽出事業の展望など、具体的な質問が飛び交いました。参加者の関心が特に高かったのは、中東の海水淡水化事業の現状や課題に関するパートであることがアンケートから明らかになりました。
今後の海水淡水化事業は、より持続可能な水供給のために新しい技術やシステムの導入が求められます。松井氏の講演は、その高い期待と同時に克服すべき課題についての意識を共有する貴重な機会となりました。
セミナー概要
- - 主催: 公益財団法人日本グローバル・インフラストラクチャー研究財団
- - 日時: 2025年1月31日(金)14:00~15:30
- - 講演者: 松井正(丸紅株式会社 Marubeni Water Development and Investment Limited社長)
- - 参加費: 無料
今後もこのような日本と中東地域の協力が進むことを願っています。