東京大学とちとせ研究所、抗体医薬品デジタル設計を革新
東京大学大学院工学系研究科と株式会社ちとせ研究所が協力し、抗体医薬品の製造プロセスにおける革命的な数理モデルの開発を発表しました。この新しいアプローチは、自動化された実験データをもとに、抗体や不純物の濃度を高精度で予測できるというものです。この技術はがんやアルツハイマー病などの治療に用いられるモノクローナル抗体(mAb)の効率的な製造に大きな影響を与えることが期待されています。
研究の背景
近年、バイオ医薬品の需要は高まっており、特にmAbはその中心的な存在です。従来、抗体を製造する過程では動物細胞を用いて抗体を培養し、その後の精製工程を経る必要がありますが、この過程は多くの変数が絡み合っており、設計が困難です。そこで、数理モデルを用いることで効率的な培養条件を見いだす新たな手法が求められていました。
新規数理モデルの仕組み
研究チームは、250mLの小型培養槽を12個用いた自動培養装置で、29の培養条件で実験を行い、データを収集しました。そこで得られたデータを基に、物質収支を用いた物理モデルとデータ駆動型モデルを組み合わせたハイブリッドモデルを構築しました。このモデルは、広範な培養条件において各種成分の濃度を予測することができ、効率的なプロセス設計を可能にします。また、詳細なシミュレーションを通じて、不純物の基準値を満たしつつ、抗体濃度を最大化できる条件が特定されました。
成果と今後の展望
この研究の成果は、医薬品プロセス開発をデジタル技術によって加速させる可能性を示しています。今後は、さらに自動化実験と数理モデリングを統合し、全体的な製造プロセスの設計に関する研究を進めることが計画されています。これにより、薬品の迅速な上市が実現し、患者への効果的な治療がより早く提供できるようになるでしょう。
研究者の声
東京大学の根本耕輔大学院生は、「自動化実験と数理モデルの融合によって、これまでには実現困難だった精密な製造プロセスの設計が可能になった」と述べています。そして、ちとせ研究所の森笹瑞季研究員も、「この技術は私たちの研究活動を大きく前進させるものであり、今後の展開に関して非常に期待しています」と興奮を隠しません。
この研究は、2026年2月12日付の「AIChE Journal」に発表される予定です。これは、医薬品製造プロセスをデジタル化するための一歩であり、未来の医療に多大な影響を与えることでしょう。