自動車整備業界に迫る危機
最近の調査結果によると、自動車整備業界は過去最多のペースで退場企業が増えており、業界は深刻な危機に直面しています。株式会社帝国データバンクが2024年7月末までの集計を基に行った分析によれば、負債が1000万円以上の倒産や休廃業、解散する企業の数が急増しています。
具体的に見ていくと、2024年の1月から7月までの間には、倒産が27件、休廃業及び解散が271件の合計298件に達しました。これは2020年の年間最多であった418件(倒産58件、休廃業360件)を上回る勢いです。特に、休廃業と解散は通年で400件を超えることが予想され、業界への影響が懸念されています。
背景にある深刻な人手不足
どのような要因がこの状況を引き起こしているのでしょうか?主な背景としては、常務運営を行う整備士の不足、後継者問題、そして経営者の高齢化が挙げられます。2022年度の整備士の有効求人倍率はなんと5.02倍に達し、2011年度の1.07倍からは信じられないほどの上昇を見せています。また、TDBの調査によると、自動車整備事業者の約57%が60歳以上であり、後継者不在の事業者の割合は59.7%にものぼっています。
競争の激化と技術の進化
整備業界には安定した需要が存在する一方で、多様な競合が存在しています。一般的な町の整備工場の他にも、自動車ディーラーや中古車販売店、ガソリンスタンド、カー用品店、低価格を売りにしたチェーン店など、競争は厳しいものとなっています。さらに、2021年10月からは全車両を対象にしたOBD診断が義務化され、車両のコンピュータ制御も進化する中、技術に対する適応が求められています。
これにより、業界全体に新たな設備の導入や人材育成が必要とされています。しかし、経営者が高齢で後継者不在の小規模な事業者にとっては、これらの対応は非常に困難です。結果として、事業を継続できず、既存の顧客を自動車ディーラーに引き継がざるを得ない事態が多く見受けられます。
今後の展望
今後、町の整備工場をはじめとする自動車整備事業者の休廃業や解散はさらに増加する可能性が高いと言えます。この現状を打破するためには、若年層の整備士をどう確保し、育成していくかが重要な課題となります。整備業界の将来を守るために、業界全体での取り組みが急務とされています。若者をこの業界に引き込む施策が、業界の再生のカギとなるでしょう。