SaaSセキュリティ評価の新たな視点と課題
近年のデジタルトランスフォーメーション促進に伴い、SaaS(Software as a Service)への依存度は年々増しています。しかし、その一方で導入時のセキュリティ評価の重要性も高まってきています。アイティクラウド株式会社が実施した最新の調査によると、SaaSベンダーや利用企業の間に存在する情報ギャップが浮き彫りになりました。このページでは、その詳細とともに、SaaSセキュリティ評価が今後どのように進化していくのかを探ります。
調査の背景と目的
アイティクラウドは、B2B向けIT製品やSaaS製品のレビューを行うプラットフォーム「ITreview」を運営しています。最近では、SaaS製品におけるセキュリティ情報の公開とその評価に焦点を当てた調査を実施しました。近年、企業間での情報共有や信頼構築が求められるなか、SaaS導入時のセキュリティ評価が必要不可欠なプロセスとなっています。この調査は、現状の把握と課題の明確化を目的としています。
調査結果の要点
調査の結果、SaaSベンダーの約69%が自社のセキュリティ情報を営業やマーケティングに活用できていないことが明らかになりました。また、SaaS利用企業の57%は、導入時の最大の懸念に「セキュリティリスク」を挙げており、両者の間での情報不足が著しいことがわかりました。これにより、以下のような課題が浮き彫りになっています。どのようにこの問題に取り組むかが、今後のSaaS市場の鍵となるでしょう。
1. セキュリティ評価シートへの対応
SaaSを新たに導入する際、企業からのセキュリティ評価シートへの記入依頼は避けられません。このプロセスにおいて、50%のSaaSベンダーが「対応工数の多さ」に課題を感じていることが判明しました。評価シートへの記入依頼数の増加や人員不足、さらには情報保証責任が営業活動のボトルネックになり、導入プロセスの遅延や機会損失につながることがしばしば見受けられます。
2. 埋もれたセキュリティ情報
さらに多くのSaaSベンダーが、69%が自社のセキュリティ情報をマーケティングに活用できていないと回答しました。多くの企業がセキュリティ関連情報を整備しているにもかかわらず、その情報が社内で活用されずに埋もれてしまっているケースが多いのです。このような状況は、機会損失を引き起こし、企業の競争力に影響を及ぼす可能性があります。
3. 情報公開への前向きな姿勢
興味深いのは、SaaSベンダーの55%がセキュリティ情報を公開したいとの意向を示している点です。彼らは情報公開の重要性を認識しているものの、「全ての情報を公開できない」という声も上がっています。この矛盾した状況が、今後のセキュリティ情報の扱いにどのような影響を与えるのかが注目です。
導入企業の期待
SaaSを導入する企業が求めるのは、信頼できる情報です。調査結果によると、導入企業の57%が「セキュリティリスク」を最大の懸念として挙げています。これにより、セキュリティ評価は導入決定に対する重要な要素であることが明らかになりました。
ウェビナーの開催
同社はさらに、調査結果をもとにしたウェビナーを5月28日と29日に開催予定です。セミナーでは、セキュリティ情報のマーケティング活用や、情報公開に関する実務的な工夫が紹介されます。参加者は全調査結果をまとめたレポートを受け取ることもできます。
まとめ
SaaSセキュリティ評価は、企業の競争力を左右する重要な要素です。今後、セキュリティ情報が正しく扱われ、活用されることで、業界全体の透明性や信頼性が高まることが期待されます。セキュリティ情報の開示が「当たり前」となる未来が実現する日も近いでしょう。