ダム再開発における革新的アプローチ
近年、気候変動による局所的な豪雨の増加や干ばつなど、異常気象が頻発しています。このような中、治水や利水の重要な役割を担うダムの再開発工事が進められています。特に、新丸山ダムの本体建設工事において、株式会社大林組や日立製作所、日立パワーソリューションズが共同でBIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling)を活用し、流体解析技術の導入を実現したことが注目されています。
1. ダム再開発の背景
ダムの再開発は、既存機能を維持しつつ、新たに高められた安全性や耐久性を保証するための重要な課題です。旧丸山ダムは洪水調節や発電を行っていましたが、近年の気象条件の変化により、その機能を強化する必要が生じました。また、周辺の河川環境の保全も大きな課題です。これに対処するため、現地状況を正確に再現し、設計と施工計画を効率的に進めるための技術革新が求められています。
2. BIM/CIM技術と流体解析
大林組が進める建設DX(デジタルトランスフォーメーション)では、2023年に社外に公開したSmart BIM Standardを活用し、三重県川上ダムのプロジェクトにおいても先進的なデジタルツイン技術を取り入れています。この取り組みにより、最新のデータを基にした3次元流体解析が実施され、ダムの放流状況が高精度でデジタル化されました。
この新たな技術を用いることで、従来1年程度かかっていた設計と施工方法の検討が、わずか3か月に短縮されました。これにより、施工時の安全リスク評価の精度も向上し、迅速かつ効果的な対応が可能となります。
3次元流体解析は、例えば、丸山ダムからの放流状態をシミュレーションすることで、流量や水位の変化を予測します。また、河道の形状を詳細に解析することにより、流れの挙動や水面と川底の流速差を明確に把握できるようになります。
3. 新丸山ダムにおける具体的な取り組み
新丸山ダムの建設工事では、既存ダムの機能を活かした上で20.2mのかさ上げ工事が行われていますが、これまでにない構造形式のため、高度な技術が求められます。BIM/CIMを使い、流体解析モデルを生成した後、ダムの放流状況をデジタルツイン化しました。
特に、既存ダムの放流解析では、その正確な流量を想定したモデル化を行い、施工現場付近の最大水位を予測。これにより、被災リスクの把握や河床形状の詳細な解析が可能となりました。
新設ダムの仮排水トンネル解析では、水の流れを迂回させるための設備をモデル化し、放流状況を精密に再現しました。この技術により、仮排水トンネルからの流れの勢いを正確にシミュレーションでき、圧倒的な解析精度を持つことが明らかになりました。
4. 今後の展望
大林組は新丸山ダムで得られた知見を活かし、仮設備の設計や現場管理の進化を目指しています。また、日立パワーソリューションズと日立製作所は、この技術をさらに他のダムプロジェクトに展開し、防災力の強化やインフラのレジリエンス向上に貢献していく予定です。
このように、先端技術を駆使したダムの再開発は、地域社会の安全と持続可能なインフラ整備に向けた大きな一歩となります。