2025年3月、関西学院大学や岡山大学、島根大学、愛媛大学、海洋研究開発機構の研究者たちが共同で行った火星深部に関する重要な研究が、国際宇宙ステーションに搭載された静電浮遊炉を利用しておこなわれました。この研究の成果は、火星内部の謎に迫るもので、火星の形成や進化についての理解を深める鍵となることが期待されています。
火星探査機InSightによる2019年の地震観測から、火星の内部構造について新たな知見が得られています。これにより、火星内部には核とマントルの間にマグマ層が存在することが確認され、特にこのマグマの特性が重要視されています。ただし、火星深部にある液体マグマがその状態を維持するためには、その密度がマントルを構成する岩石の密度よりも高くなることが必須です。
今回の研究は、火星の深部での重力的安定性を持つマグマの組成を解明する挑戦です。河野教授を中心とした研究チームが行った実験によって、鉄分の多いケイ酸塩組成のマグマの密度を測定することに成功しました。この実験は、従来の地上での条件下では測定が難しかった高温下におけるものです。その結果、このマグマは火星のマントルが形成する岩石より高密度であることが示されました。
具体的には、火星の初期形成段階において、マグマの海(マグマオーシャン)が生成され、その中で結晶化が進行する際に、岩石よりも重いマグマが深部に沈み込む可能性があることが示唆されています。こうすることで、火星の核とマントルの間に位置するケイ酸塩メルト層が形成されるのではないかと考えられています。これらの知見は、火星探査や宇宙科学におけるさらなる研究にも繋がることが期待されています。
今回の研究成果は国際的な学術誌『Communications Earth & Environment』に掲載され、仲間たちとの共同作業がいかに重要であるかを再認識させる結果となりました。今後の火星探査において、更なるデータが収集され、活動する火星の本質がより明らかになることを期待しています。
この研究は日本学術振興会及び科研費の支援を受けて進められました。火星の謎に挑む日本の研究者たちの努力は、その成果によって新たな宇宙の理解に貢献することでしょう。日本が宇宙科学の分野で果たす役割がますます高まっています。これからの研究結果にも注目が集まります。