順天堂大学の研究者たちは、画期的な治療法の開発に取り組んでいます。具体的には、iPS細胞技術と遺伝子編集技術を用いた新たな細胞傷害性T細胞(CTL)療法の医師主導治験が始まることが発表されました。この研究グループは、これまで多くの研究と開発を積み重ね、特に2018年以降は、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けながら、進行してきています。
今回始まる治験の目的は、ヒト・パピローマウイルス(HPV)に感染した子宮頸がん患者に対して、iPS細胞由来のCTL療法の安全性を評価することです。対象となるのはHLA-A*2402を持つHPV16型陽性の患者であり、これまでの標準治療が効果を持たないとされている再発例の患者に新たな治療を提供できる可能性があると期待されています。
子宮頸がんは、HPV感染が主な原因であり、特に女性においては主たるがんの一つです。HPVワクチンは予防には効果的ですが、すでにがんになってしまった場合には、従来の治療法の有効性が十分ではありません。一般的な治療には外科手術や放射線、化学療法が含まれますが、進行したがんの場合にはこれらの治療法が効かない場合が多く、そのため新しい治療法の開発が急務とされています。
本研究の新しい治療法では、iPS細胞技術を駆使して健康な人から作られたCTLを利用します。これにより、がん患者の体内で抗原を攻撃するCTLが不足している問題を解決し、より多くの患者に対して即座に利用できるCTLを作成することが可能になります。この新しいアプローチが成功すれば、これまで治療が難しかったHPV陽性の子宮頸がん患者にも新たな希望を提供できるかもしれません。
医師主導治験は、製薬企業が関与しない医師自身の計画によって行われ、患者の安全性や倫理に十分配慮されています。この治験は2024年11月に治験届が受理され、2025年1月から実施されます。治験の進め方として、シクロホスファミド水和物とフルダラビンリン酸エステルを用いたリンパ球除去療法の後に、iPS細胞由来のCTLを投与する予定です。安全性の確認後、反復投与が行われ、今後の治験結果により新たな治療法としての道が開かれることが期待されています。
このように、順天堂大学の研究は子宮頸がん治療において新しい光をもたらす可能性があり、医療におけるオプションを広げる重要なステップとなるでしょう。治癒率の向上が期待されるこの新しい治療法が、再発や難治性の患者にどのような影響を与えるのか、今後の展開に注目が集まります。