深海の生態が明らかに!新たなハゲナマコの種の発見
国立科学博物館を含む国際的な研究チームが、太平洋の深海底に生息するハゲナマコ属の新たな多様性を明らかにしました。これまで1種とされていたムラサキハゲナマコが、実際には4種の新種候補を含む10種であることがわかりました。この研究成果は、深海生態系に関する理解の深化に寄与することが期待されています。
1. 研究の背景
深海は地上の生態系に比べて調査が難しく、生物多様性に関する理解が遅れていました。従来、深海の環境は安定しており、多様性が低いと考えられてきました。しかし、最近の研究により、深海にも多様な生物が生息していることが示唆されています。ハゲナマコ属はその代表的な存在であり、日本周辺の深海でも広く観察されていますが、形態的に似た種が多く、正確な分類が難しいという問題があります。
2. 具体的な研究方法
本研究では、遺伝子解析を用いてハゲナマコ属の種多様性を再評価しました。国立科学博物館を中心に、日本、オーストラリア、ニュージーランドなどの博物館から収集した178個体の標本が対象となりました。この標本では、DNAバーコーディングやMIG-seq法などの先進的な遺伝子解析手法を用いて、遺伝的および形態的な特徴の比較が行われました。
3. 研究の成果
その結果、太平洋に分布しているハゲナマコ属の中に互いに異なる10のグループが確認され、それぞれ異なる種として扱うべきであるとされました。中でも、ムラサキハゲナマコは1990年に提唱された種であり、新たに6種が以前に提唱されていたこともわかりました。さらに、4つの未記載種も見つかり、これまで知られていなかった海洋生物の収集の重要性が浮き彫りになったのです。
4. 今後の展望
発見された4種の新種候補は、今後さらなる形態的比較が行われ、新種として正式に記載される見込みです。また、東太平洋やインド洋、南極海での比較分析を進め、深海生物の多様性の理解を深めていく考えです。深海の生態系に関する研究は、環境保全や生態系の持続可能性にも寄与する重要な分野です。
5. 研究の意義
この研究は、生物の分化や多様化の様式を理解するための重要なステップとなります。特に、標本の収集と解析を結びつけることは、深海生物の多様性解明に貢献する新たな手法として注目されています。
6. 発表論文
今回の研究の成果は、2024年12月24日に国際的な海洋生物学の専門誌「Marine Biology」に掲載されました。著者には、国立科学博物館の小川晟人研究員や、昭和大学の蛭田眞平准教授などが名を連ねています。今後も、この分野での研究が進むことで、新たな発見が期待されます。