助産師による乳房ケアの革新的な研究
最近、助産師の乳房マッサージや搾乳器が授乳中の母親の乳房に与える物理的な影響についての研究が頭角を現し、注目を集めています。この度、ピジョン株式会社と構造計画研究所が共同で行った研究が、看護理工学会2024年度奨励賞を受賞しました。本記事では、この研究の概要と意義について詳しく解説します。
受賞論文の背景
授乳は母親と赤ちゃんとの大切なコミュニケーションの一環ですが、母親のライフスタイルの多様化により、直接授乳が難しいケースも増えてきています。例えば、赤ちゃんの入院や母親の職場復帰などが影響しています。そこで、助産師による乳房ケアが必要とされる場面が増えており、これを支えるための新しい知見の取得が求められています。
研究内容の概要
本研究は「助産師の乳房マッサージおよび搾乳器が乳房に及ぼす力学的作用」と題され、授乳ケアの新しい方法として助産師による乳房マッサージや搾乳器の効果を科学的に解明しようとするものです。この研究は、授乳中の母親における乳房ケアのメカニズムに関する初期段階の成果を示しています。
研究のアプローチ
研究チームはまず、9名の助産師に対して光学式の3次元動作解析を実施し、母親の乳房、助産師の指、搾乳器の3次元モデルを作成しました。このモデルを基に、乳房マッサージや搾乳の動作を有限要素法でシミュレーションし、乳管の位置における引張りと圧縮の作用を明らかにしました。結果として、乳管の方向に対し直行する圧縮が生じることが確認され、これが母乳排出に重要な力学的作用である可能性が示されたのです。
今後の展望
ピジョンの代表、北澤憲政社長は、「この研究は授乳に対する理解を一歩深めるものです。母乳が出るメカニズムをより詳細に学ぶことで、今後の研究開発に活用し、母乳育児のさらなる支援を行っていきたい」と語っています。
また、助産師のケア技術が母乳育児の持続可能性に寄与することが期待され、研究成果は実践への応用が望まれています。授乳環境の多様化に対応するため、今後もこの分野への研究は重要性を増していくでしょう。
論文詳細
- - 論文タイトル:Mechanical effects of a midwife massage and breast pumps on breasts
- - 著者:Yukifumi Ochiai, Chihiro Kishi, Yoko Idei, Naoki Sahashi
- - 掲載誌:「看護理工学会誌」10巻P.157-167
- - 公開日:2023年6月30日
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この研究を通じて、母乳育児の延長や乳房ケアの技術向上が期待され、今後もさらなる発展が期待されます。