フランス酪農業界における持続可能性への挑戦
フランス全国酪農経済センター(CNIEL)が発表した最新レポートは、フランスの酪農業界における環境と社会的な取り組みを広く網羅しています。このレポートは2025年5月の発表予定で、特に注目すべき点は脱炭素化、温室効果ガスの削減、再生可能エネルギーの利用、生物多様性の保全、気候変動への適応など、持続可能な酪農に向けた具体的な道筋が示されている点です。
1. フランス酪農の脱炭素化の現状
フランスの酪農業界は1990年から2021年にかけて、実質的な改善を続けており、総炭素排出量を27%削減することに成功しました。この成果は、EUのLIFEプロジェクトである「カーボン・デイリー」との連携によって開発された診断ツール「CAP’2ER®」の活用に基づいています。このツールは各酪農場での排出量の評価を行い、それに基づく削減策を導入することで、酪農部門における持続的な成長を促しています。
2. 自然共生型の酪農モデル
フランスの酪農地帯では、牧草地や森林が二酸化炭素(CO₂)を吸収し土壌に固定する仕組みが形成されています。具体的には、平均的な草地1ヘクタールあたり約85トンのCO₂が貯蔵されており、この地域が全国的な炭素固定の重要な拠点となっています。CNIELは農業慣行が土壌の炭素貯蔵に与える影響を評価する目的で、「牛・羊畜産土壌における有機炭素観測所(OCBO)」プロジェクトの支援も行っています。
3. 気候変動と牛の快適性
さらに、CNIELは2015年から2019年にかけて、全土20地域で気候変動が酪農経営に与える影響を分析する「ClimA-Lait」プログラムを実施しました。乳牛は寒さに強い一方で、暑さには非常に敏感であるため、厳しい気象条件がもたらすストレスを軽減するための牛舎設計や、耐熱性遺伝の研究が進められています。これにより、「動物福祉」と「生産性」を同時に追求する科学的アプローチが導入されています。
CNIELの役割
CNIEL(フランス全国酪農経済センター)は、国内の酪農家や酪農協同組合、製造業者、流通関係者から成る非営利団体であり、以下の重要な活動を行っています。1つ目は、酪農業界の経済的動向や、乳製品が健康に与える影響に関するリサーチです。2つ目は、フランスの乳業製品、特にチーズの良質なイメージを広め、消費拡大を目指す広報活動です。そして3つ目が、国際標準ISO26 000「社会的責任」の原則を尊重した社会活動「フランス・テール・ド・レ」の推進です。
持続可能な未来に向けて、フランスの酪農業界は着実に前進しています。環境への配慮と社会的責任を両立させながら、今後の展望がますます期待されます。