失語症治療の新しい進展
2025-01-28 14:22:09

脳波を用いた個人化刺激法が失語症治療の新たな道を開く

脳波を用いた個人化刺激法が失語症治療の新たな道を開く



研究背景


失語症は「物の名前が出てこない」「言葉を理解できない」とした言語の障害を伴い、コミュニケーションに大きな影響を与える症状です。この疾患は、脳卒中の約30%の患者に見られ、日本国内で約50万人の人々がこの障害に苦しんでいるとされています。失語症者に対する新しい治療法の開発が急務となっている中、東京科学大学の吉村奈津江教授らの研究チームは、脳波信号を使った個人化刺激法の有効性を示しました。

研究の目的と方法


本研究では、言語機能を担う脳領域を特定することを目指し、呼称(物体名称を発語する機能)に関与するブローカ野への微弱な電気刺激(TDCS)の効果を評価しました。従来、fMRIを用いて個人ごとに刺激領域をカスタマイズする方法が研究されていましたが、設備が必要であり汎用性が限られていました。これに代わり、脳波を用いた手法により、より広い範囲での臨床応用が期待されるのです。

研究成果


本研究では、まず健康な成人を対象に脳波とfMRIを用いて呼称中の脳活動を計測しました。その結果、脳波を用いた信号源推定法により個人ごとの活動領域を特定し、これがfMRIで得られた領域と高い一致率であることが確認されました。また、この脳波によって特定された領域へのtDCSを行ったところ、ブローカ野への刺激に比べて呼称の反応時間が平均40ミリ秒短縮されることが分かったのです。

新しい治療の可能性


この研究の重要な点は、条件が整った中で電気刺激の有効性が確認されたことです。失語症の治療方法として、脳波を用いた刺激法が実用化されることで、個々の患者に最適な治療が可能になるかもしれません。これにより、従来の治療法では難しかった個人差に対応したアプローチが実現し、より多くの失語症患者が社会復帰できる可能性が高まります。

今後の展望


今後は、実際の失語症患者に対してこの個人化脳刺激法の有効性を検証し、さらなる治療法の開発を行なっていく予定です。個々の患者に最適化された刺激条件の形成により、脳機能の向上を目指すことは、リハビリテーションの効果促進にもつながるでしょう。この研究成果は、今後の医学研究において大きな影響を与えると期待されます。

研究に関する情報


本研究は、科学技術振興機構(JST)および日本医療研究開発機構(AMED)の助成を受けて行われました。今回の研究成果は、2024年1月28日付の「Neuroimage」誌に掲載される予定です。この成果は、失語症治療への新たな展望を切り開くものであり、今後の臨床応用に向けた期待が寄せられています。

最後に


失語症は根深い問題であり、社会との断絶を招くことがあります。今回の研究成果は、個人化されたアプローチがもたらす新たな治療法のプロトタイプとなる可能性を秘めています。今後も、この分野での研究が進展することを期待しています。


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会社情報

会社名
Ghoonuts株式会社
住所
京都府京都市下京区中堂寺南町134京都リサーチパーク ASTEM棟8F
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