カンボジアの教室が切り拓く教育の未来
私たちの夢は、カンボジアという国の教育現場から広がり、社会全体に変革をもたらすことです。良質な教科書やカリキュラムの整備、制度や政策の改善は必須ですが、それだけでは根本的な解決にはならないことも私たちは認識しています。どれほど優れた教育制度が整備されても、教室の中で日々生徒と接する教師一人ひとりの姿勢と創意工夫が、教育の質を左右する最も重要な要素であるからです。
SALASUSUは、4月1日を「夢を発信する日」と定め、特定非営利活動法人としてその思いを形にする取り組みを進めています。ここでは、カンボジアの教師、ソク先生の物語を通じて、SALASUSUが描く教室の理想像をお届けします。
ソク先生の気づき
ソクは小学校の教師です。「私はただの平凡な教師でした」と彼は振り返ります。「生徒には『できる子』と『できない子』がいることは自然だと思い込み、日々教壇に立って生徒を評価していました。しかし、教室で本当に起こっていることに目を向けていなかったのです。」
そんなある日、普段は窓の外に視線を向けている生徒のリムが、珍しくノートに夢中で何かを書き込んでいる姿を目にしました。その光景に驚いたソク先生は、リムに何があったのかを不思議に思いました。
リムは両親がタイで働いているため、祖母と二人三脚で生活をしています。ソク先生は、もっと落ち着いているリムを助けるためには家庭環境が影響していると考えました。しかし、観察を続けるうちに、リムが集中できない原因はそれだけではないことに気づきました。実は、彼は文字を読むのが苦手だったのです。時折、隣の生徒がさりげなく助けてくれていたという事実にソク先生は驚きました。
教室が変わる時
この気づきを得たソク先生は、教室の座席配置を見直し、生徒たちが互いに声を掛け合えるよう4人のグループに変更しました。すると、教室内の雰囲気が途端に明るくなり、リムをはじめ多くの生徒が夢中になって学ぶ姿が見られるようになりました。「教室が静かで穏やかに活気を帯びてきた」とソク先生は語ります。
卒業式の日、リムはソク先生にこう告げました。「先生の授業の日は、学校に来て本当に良かったと思っていましたよ。」この言葉にソク先生は心から感動しました。「私は教壇に立ちながら、教室で本当に何が起こっているのかをずっと見逃していたのです。『できる子』も『できない子』も関係ありません。全ての子どもが夢中で学べる環境を作れるかどうかは、教師の小さな気遣いによるのです。」
小さな変化が広がる
このソク先生とリムとの物語は、「April Dream」のために考えられた架空のストーリーですが、SALASUSUがカンボジアで実際に行っている教育活動の中に実際に存在する多くの小さな変革を示しています。
カンボジアという教室から始まった小さな変化が、いつか国境を越え、世界中の教室にまで影響を及ぼすことを私たちは夢見ています。教師が小さな気づきを経て、生徒たちが学ぶことへの熱意を持ち続ける教室作りが広まることで、日本やアジア、さらには世界中の教育現場で「教室の当たり前」となっていくでしょう。
私たちのビジョンは、教室という小さな現場からの変化が、それに続く社会全体の変化に繋がるということです。私たちは東京大学の荻巣崇世准教授や他の研究者と協力しながら、この小さな変化を積み重ねてきました。15年にわたって教師や子どもたち、地域が変わる瞬間をいくつも目にしてきました。
あなたとのつながり
この夢を実現するために、私たちはより多くの人とつながりたいと考えています。企業の皆様へ。人はいつでも、どこでも成長し学ぶことができます。教育現場にあなたの会社の社員の皆さんが踏み込むことで、互いに学び合い、新しい視点を得られるでしょう。ぜひ、一緒に社会を変える旅を始めませんか?
また、学校や教育関係者の皆様も国を超えた夢を追いかけたいと思っています。私たちと共に、『子どもが夢中で学ぶ教室』を手に入れるための活動にご参加ください。スタディツアーの受け入れも行っています。
関心を持っていただいた全ての皆様にお願いがあります。教室の現場での小さな変化が静かに社会を変えるきっかけとなります。あなたの支援が一人の教師の気づきにつながり、その瞬間が一人の生徒を夢中にさせる手助けとなるはずです。この旅に、ぜひご協力ください。イベントも随時開催しています。
SALASUSUについて
SALASUSUは「Enjoy your life journey - 誰もが人生の旅を楽しめる社会へ」というビジョンを持ち、質の高い学びを公教育を通じてすべての子どもに届けることを目指しています。日本発の教育改革手法を活用し、教師教育の革新を進めるとともに、アカデミアとの協働を通じて理論と実践を結びつける取り組みを展開しています。カンボジアを拠点に、アジアそして世界各国へと広がる公教育改革のモデルケースを整備しています。
詳しくは、公式サイトをご覧ください。