広島発「介護×働き方改革×DX」実証研究プロジェクト
広島県において、介護職員の業務軽減や効率化、そして働きがいの向上を目指す「介護×働き方改革×DX」プロジェクトが進行中です。2022年6月から2023年3月までの期間に実施されたこの企画は、ICT(情報通信技術)を活用した見守り機器の導入に関する実証研究です。以下に、その進捗と成果を詳述します。
Ⅰ.検証の目的
このプロジェクトは、ICT機器の導入が介護職員の業務負担を軽減するだけでなく、職員自身の働きがいや、利用者の生活の質(QOL)向上にもつながることを科学的に実証することを目的としています。
Ⅱ.検証内容
1. 検証期間
- - 期間: 2022年6月1日~2023年3月31日
2. 検証場所
- - 場所: 医療法人社団明和会サービス付き高齢者向け住宅さくらす大野
3. 使用ICT機器
「まもる~のStation」を使用し、以下の情報を収集・管理します:
- - ベッド上の脈拍、呼吸、体動、睡眠のデータ
- - 室温、湿度、照度の把握
- - 離床やドアの開閉、トイレ利用などの動作をセンサーでキャッチ
- - 複数の居室状況管理をスマートフォンで実施
4. 検証項目
1. 利用者のQOL:睡眠状況やインシデントの回数を比較
2. 職場のコミュニケーション:職員間の情報共有状況をアンケート調査
3. 職員の働きがい:アンケートをもとに前後の変化を比較
Ⅲ.実施方法
- - 職員とコンサルタントとの面談
- - プロジェクトに関する説明会
- - 老齢期の睡眠特徴やリスキリングについての研修
- - データ分析力を高めるためのグループワーク
Ⅳ.中間評価
1. 利用者のQOL
ある80代の認知症高齢者において、ICT導入後に以下の改善が認められました:
- - 離床の時間が増え、日中活動する機会が向上
- - 照度など生活環境の最適化が図られ、睡眠の質が改善
- - これにより介護保険サービスの申請が進むなど、効果的な介入が生まれました。
2. 職場のコミュニケーション
- - 情報の共有が進み、「個の介護」から「チームの介護」への滑らかな変化が見受けられます。
- - デジタルデータが職員間の共通言語となり、建設的な議論が促進されました。
3. 職員の働きがい
- - 「仕事の裁量度」や「フィードバック・達成感」のスコアが改善。
- - 利用者の改善を共有することで、職員同士のつながりも強化され、働きがいが向上しています。
Ⅴ.成果の兆し
個別ケアを越えたチームケアの実現が進展すると共に、職員の心理的要素がポジティブな方向に変化しています。また、データ活用が利用者の生活にプラスの変化をもたらす事例が増え、職員の意識や動機向上に寄与しています。
Ⅵ.今後の課題
- - 職員がICTに適応できるような人材への能力開発が求められます。
- - ICT導入を前提とした業務フローの見直しが必要であり、介護ロボットの使いやすさ向上も意識することが重要です。
このプロジェクトを進めることで、広島の介護現場が新たな時代に向かって進化していることを感じます。データを実際に活用することで、変化を実感し、より良いケアを提供していく日々が待ち望まれます。