日本映画撮影監督協会が韓国で実施した映像制作研修の成果
日本映画撮影監督協会(JSC)は、文化庁の支援事業の一環として、国際的に活躍する映画撮影者の育成を目的としたプログラムを展開しています。今回は、前回のタイでのマスタークラスに続く第2弾として、韓国での映像制作現場研修ツアーの報告をお届けします。本研修は、シンポジウムやスタジオ訪問、映画祭での交流を通じて、次世代の撮影監督の育成につながる知見やネットワークを形成する機会となりました。
スケジュール
9月16日から19日まで、羽田空港から金浦空港への移動を皮切りに、韓国における研修が開始されました。初日は、ソウルの機材レンタルショップ「SLR」を訪問後、CGKとJSCの合同シンポジウム「Cinematic Quantum Dialogue」を開催しました。ここでは、韓国映画撮影監督協会(CGK)との意見交換が行われ、撮影監督としての権利擁護や制度の整備について議論が交わされました。
シンポジウムの中で、日本側からはJSC副理事長の谷川創平氏が「日韓の映画業界には距離がない」と強調し、韓国の撮影監督であるキム・ヒョング氏は「アジアから世界市場へ共に挑戦しよう」と力強く呼びかけました。
その後、参加者たちはDEXTER STUDIOSやCJ ENM STUDIO CENTERを訪問し、韓国のトップレベルの制作環境や教育体制を直接体験しました。
韓国の映像制作環境
特に印象的だったのは、DEXTER STUDIOSのVFXスーパーバイザーとの交流を通じて、技術的な部分だけでなく、物語を共に創る姿勢にも刺激を受けたという点です。CJ ENM Studio Centerでは、1,600㎡の広さを誇るスタジオが稼働している様子や、様々なOTT作品が生まれる環境にも感銘を受けました。
また、韓国映画アカデミー(KAFA)の最新設備や教育プログラムの充実度にも目を見張るものがありました。「教育と労働環境の両輪が合ってこそ、世界的人材が育つ」との意見もあり、参加者たちは韓国の制度の強みを認識しました。
釜山国際映画祭の熱気
調査の一環として釜山国際映画祭も訪れましたが、ここでは若い観客の熱気やOTT企業の存在感をリアルに体感しました。映画祭の役割について再認識し、マーケット機能が持つ重要性にも改めて気付かされました。
今回の成果と今後の展望
この研修を通して得られた最大の成果は、法律や助成金制度が現場環境にどれだけ影響を与えるかが明確になった点です。韓国では労働環境が法的に整備されており、健全な労働環境を実現することができています。これに対し、日本は制度的な改善が遅れており、個人の努力に依存している現状が課題となっています。
JSCは今後も、このような国際的な研修を通じて、次世代の撮影監督を世界に送り出す努力を続けていく考えです。活動の最新情報は、随時発信を行いますのでご期待ください。