金沢における地域参画の実証事業
NPO法人クロスフィールズ(東京都品川区、代表:小沼大地)は、2024年8月から石川県金沢市を拠点に、能登半島地震での広域避難者に焦点を当てたコミュニティづくり事業を開始しました。この取り組みは、高齢者が新たな地域とつながり、自ら参画するきっかけを作ることを目指しています。そして、その中で開催される交流型イベント「笑語ひろば」は、避難者と地域住民との交流を深める貴重な場となっています。
この笑語ひろばは、2024年10月から2025年3月までの期間に、合計13回のイベントが行われ、256名が参加しました。参加者の多くが70代以上の高齢者で、出身地は主に珠洲市や輪島市です。女子や独居世帯の参加が多いことが特徴的です。お互いの体験を語り合う中で、参加者の約94.9%が「満足」との結果を示し、特に共通の困難を分かち合うことで、心の癒しを得たとの声が寄せられました。
新たなつながりが孤独を軽減
調査によると、70%を超える参加者がイベントを通じて新しい友人や知人ができたと回答しています。このことは、孤独や孤立を防ぐ上で非常に重要な意味を持っています。参加者同士の意図的な交流時間を設けたことで、互いの接点を増やし、コミュニケーションが促進される施策が功を奏したとしています。
また、このプロジェクトには6名の市民リンクワーカーが参加しており、彼らは避難者との信頼関係を築く役割を果たしました。地域のサークル活動や支援を必要とする人々との橋渡しを行い、その結果、支援者同士のつながりも強化され、地域連携が進みました。リンクワーカー自身も、地域のコミュニティの中で重要な役割を果たす存在として育ちつつあります。
様々な課題が浮き彫りに
しかし、このプロジェクトの運営には課題も存在します。参加者の52%が「能登に帰る予定がない」と回答しており、将来的に金沢市に長期的に定住する可能性が示唆されています。この中で、多様な背景を持つ新たな住民をどのように地域が包摂し、行動を促すかが今後の大きな課題となります。また、共通の痛みを抱える方々同士が集まる居場所の確保や、個々のニーズに応じた支援が求められる中で、当事者の主体性を尊重した関わりがますます重要になるでしょう。
特に、プロジェクト参加者は約2,700世帯に及ぶ支援対象世帯として認識されており、金沢市はそのニーズに応えなければなりません。
今後の展望
クロスフィールズは、今後も地域住民やリンクワーカーとともに自主的な居場所づくりや地域活動を支援し、このモデルを他の地域にも展開することを模索しています。「孤立しない地域社会の実現」に向けてのサポート体制を整え、更なる発展を目指すとのことです。尚、8月20日16時からは、これまでの取り組みの成果や示唆を発信するオンラインイベントが開催される予定です。
この取り組みの進展には多くの期待が寄せられており、孤独対策への具体的な指針となることが期待されています。