AI時代の要件定義サミット2026レポート
2026年6月11日、東京で開催された「AI要件定義サミット2026」には、約1400名が参加し、AIとシステム設計の未来について深い議論が交わされました。このイベントは、株式会社ROUTE06によって主催され、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する企業や専門家が一堂に会した場となりました。特に、DeNA、内閣府、IPA、NTTデータ、日立製作所など、業界を代表する企業が参加し、それぞれの立場からAI時代の要件定義の重要性について語りました。
基調講演
DeNAの南場智子会長
基調講演では、株式会社ディー・エヌ・エーの南場智子会長が登壇し、同社が目指す「Delight創造エコシステム」について語った。南場氏は、AIを活用することで法務業務の契約審査時間を9割減少させた実績や、QAテストでの時間短縮を具体例として提案。要件定義の過程で重要なのは、「ツールを導入するだけでなく、ワークフロー自体をAIネイティブとして再設計すること」であると強調しました。彼女は、AI時代には企業のあり方も変化するべきであると述べ、具体的には「固体から流体へ」と表現し、柔軟な適応力を持つ組織構造が求められると呼びかけました。
NTTデータの海浦隆一氏
続いて、NTTデータグループの海浦隆一氏が登壇。彼は「要件定義はAIの指示書」との視点から、AIが生成するコーディングの速度が上昇する一方で、曖昧な要件が急速にシステム下流工程に流れ込むリスクについて警鐘を鳴らしました。海浦氏は、ドメイン知識を従来以上の深さで構造化することが、品質と速度の両立に繋がると力説しました。また、ミッションクリティカルなシステム開発においては、既存の資産がAIに適応していないことが大きな課題であることも指摘しました。
日立製作所の広瀬雄二氏
日立製作所の広瀬雄二氏は、「要件定義の認識ギャップをどう埋めるか」と題し、AIとローコードを用いた合意形成のアプローチを紹介。具体的には、開発初期において成果物を先に提示することで、業務側と開発側の認識を早くすり合わせる手法を説明しました。この手法では、必要な条件を初期段階で合意できるため、開発後半の問題を未然に防ぐことができると述べました。
内閣府の大平利幸氏
内閣府の大平利幸氏は、政府情報システム調達におけるAI駆動開発の導入促進について触れ、「職員のIT知識不足」と「要件定義の曖昧さ」が生んだ「負のループ」を断ち切る可能性について語りました。AIを活用することで、担当職員が直面する課題を克服する道筋を示し、AIが補助役として活躍可能であることを強調しました。
IPAの平本健二氏
最後に、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の平本健二氏がAI社会における要件定義の重要性を述べました。AIの指示に従うためには、要件定義を個々の裁量から共同理解のある工学的なものへと移行する必要があると語り、さらに「リーガルエンジニアリング」といった新たな視点にも言及しました。
まとめ
このイベントを通じて、AI時代における要件定義の重要性と、各企業・行政機関の取り組みが明確化されました。AIの進化に伴い、システム設計のアプローチも変わる中で、今後のビジネス界においてもAIを活用した要件定義がますます重要になることが期待されます。参加者から寄せられた熱い議論を根底に、さらなる議論の深化が求められるでしょう。今後の動向にも注目です。